ファントム・ローズ
僕は動揺してしまった。本物じゃないってわかっていてもダメだ。
その一瞬にローズが眼前に迫っていた。
薔薇の鞭が僕の手足を拘束した。
逃げるミラー。鏡が光るように瞬き消えた。
残された僕とローズは対峙する。
無機質な白い仮面だ。なのに、どうして、そんなに可哀想な顔をする?
ローズはおそらく僕に出会ったときから感じていたのだろう。
僕は近い将来?弾かれたモノ?になることを――。
「どうして僕に関わる?」
ローズは僕が?弾かれる?ことを阻止できなかった。むしろ、鳴海愛は僕と共に事件を追っていた。ローズのせいで僕は?弾かれた?ともいえる。
「世界を壊して回ってるのはおまえのほうだろ!」
――涙っ!?
白い仮面が一筋の光りの粒を流した。
飛び退いたローズの周りに薔薇の花びらが舞う。頭が眩むほどの芳香がした。
そして、大量の花びらに包まれながら消えるファントム。
残り香。
逃げられた。
ミラーにも、ローズにも。
また無限にあるこの世界でミラーの本体を見つけるのは骨が折れそうだ。
作品名:ファントム・ローズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)