ファントム・ローズ
アスカの姿と記憶を持っているなら、やっぱりそれはアスカなんだ。だから僕はこのアスカを敵としては見れない。
「危ない!」
突然ファントム・ローズが叫んだ。
僕は真後ろから殺気を感じた。
鞭が宙を跳ねた。
「ギャア!」
後ろから悲鳴が聞こえた。
すぐに振り向くと、すでにアスカの姿はなく、白い仮面のファントム・ミラーがいた。
ファントム・ローズが追撃する。
薔薇の香りが辺りを満たす。
次の瞬間、目が潰れるかと思うほどの閃光が放たれた。
目が見えない。
気配がする。
「逃げられた」
その声は……ファントム・ローズだろうか?
逃げられたってことは、ファントム・ミラーにってことに決まってる。
まだ目がチカチカするけど、だんだんと視界が戻ってきた。
目の中にファントム・ミラーの人影が残像みたいに残ったままだ。瞬きするたびに見える。
ファントム・ミラーがいなくなったんなら、僕は渚のところに行かなきゃ!
ふと周りを見渡すとファントム・ローズの姿もいつの間にかなくなっていた。
薔薇の残り香だけが漂っていた。
作品名:ファントム・ローズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)