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明日に向かって撃て!(終)

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『もしもし、おたくさん、浮気調査をしてくださるの? 今“憩い”にいるんだけど、ここの人に教えてもらったのよ』
「はいはい、お引き受けいたします、よろこんで。できれば詳しくお聞きしたいので…………」

 というわけで、初めて人間相手の仕事を得た。
 相手は響光太郎。このあたりに秘密の別宅を構えて女を囲っているのだとか。依頼主は響幸子さん。タクシーで後を付けたのだが、ここらで見失ったとのこと。光太郎の写真と臭いの残ったハンカチを預かっている。家の場所を突き止め、証拠写真を撮ることが仕事だ。
 やって来るのは毎週日曜日、午前10時ごろになるらしい。
 友人の和登さんに男の写真を見てもらったが、心当たりはない、という。
 
 日曜日の午前9時すぎから助手のシャーロックとともに捜査に出た。 ベストの内ポケットには銃を忍ばせている。コルトガバメントM1911。うん、探偵の気分だ。ああ、これはスプリングエアBBガンだ。おもちゃだからご心配なく。
 シャーロックにはハンカチの匂いをかがせてある。男は臭い、女は匂い。ほんのりと香水の匂いを俺は嗅ぎとったのだ。奥さんのとは違う。俺はこういうことには敏感だ。

 名犬シャーロックはこじんまりとした家の門口で、この匂いを嗅ぎ取った。
 庭が広く取られている。手入れの生き届いた庭の生け垣の隙間から中に入って、主の存在を確かめてくる間、俺は近くの公園で待った。
が、戻るのが遅い。
 20分ほど待ったろう。
 戻って来ると、ワン、と一声。家にはひとりだけがいるということ。
 しかし11時を過ぎても、響光太郎が来るのは見られなかった。