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3等星と七つ星

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その日の夜。
思い立ったが吉日、子供染みた探検を始めた
向かうのはアパートの後ろに聳える小高い丘
向かってみると、丘は思ったよりも閑散としていてあっという間に登れそう
地元の人がよく来るのか、沢山の足跡が道を作っていた
その道なりに沿って歩いていくと、すぐに頂上が見える
「あとちょっと」
スピードをあげて上まで登り切ると、頂上は開けた草原だった
あたしのアパートがちょうど見下ろせるくらいの高さで
ちょっとした高台のような感じ
草原を見渡しても辺りにはなにもなくって…
「あれ?」
あたしの右後ろ、奥のほうに人影が見える
恐る恐る向かっていくと、それは小さな男の子の影だった
「こんばんは。なにしてるの?」
声をかけた途端びくっと肩をすくめてこちらを睨みつけられた
「だれ…」
もろ不審者じゃん、あたし
顔を見ると、3.4年生といったところだろうか
「今日、あそこのアパートに引っ越してきたんだけどね」
そういってここから見えるボロアパートの屋上を指差す
「まだここのこと何にもわかんないから探検してるんだ」
「ふーん」
鋭い目が少し緩まったように見える
警戒レベルが下がったみたい
「ここ、綺麗な場所だね。町が見渡せる」
「まぁね。この町の中で一番良い所だよ」
「へぇー、そうなんだね」
確かに、静かで空気も澄んでで、ここだけ時間の流れが違うみたい
「にしても、この町は灯りが少ないねー。夜になると凄い暗くなっちゃう」
ここから町を見渡しても、この時間では住宅の明かりぐらいしか見えなくて
都会の明るさなんかとぜんぜん比にならない
「うん。でもね、その分上がとっても明るいんだ」
「上って?」
ほら、と男の子は指で空を指した
「わぁ…!!」
そこには、夜空を覆い隠してしまうほど無数に散らばった星たち
一際光り輝く星から、目を凝らさないと見落としてしまいそうな星まで
数え切れない程の星たちがあたしを圧倒した
「こ、こんなに沢山の星は始めて見たかも…」
「都会なんかじゃ絶対見れないよ。これがここのいいとこ」
都会じゃ、街灯や建物の明かりが多すぎて、星の明かりは消されてしまう
こんな綺麗なものが見られなくなるなんて、勿体無いな

作品名:3等星と七つ星 作家名:ひさぎ