Thinking Time
何を着ていこう、何を話そう。
髪型はどうしよう、女性受けするならアップに纏めたほうがいい?
でもあまりかっちりしすぎて、真面目だと思われても困っちゃう。
お弁当を持っていくか、食堂に行ってみるか。
仲良くできるかしら、馴染めるかしら。
仕事云々は頭の中からほっぽり出して、考えるのはそんな事ばかり。
だって、正直仕事なんてどうにかなると思ってるもの。
専門職や技術職でもないし、学歴も関係ないような仕事。
それを選んだのか選ぶしかなかったのかは微妙なとこだけど、考えたって仕方ないからやめておく。
答えなんて知りたくないから。
ただ、これから知り合う先輩・同僚とはいいコミュニケーションの手段にもなるから、愚痴を言えるだけの不満は持っていたほうがいいかもね。
けれど、どこまで自分の事を話していいのかしら。
いいえ、高校時代の部活が何だったかは言えないわ!
彼氏がいるのって聞かれたら、みたいな人は居ます、じゃ逆に聞いてくれって言ってるようなもんだし。
そうね、居ない、でいいわよね。
オフィスで新しい出会いがあったとき、もったいないもの。
恋の話も、溶け込むには必須項目でしょ?
どうしようかな。
口ごもるように呟いて、真っ黒のツヤツヤしたカバンに持ち物を詰め込む。
用意は出来てるの、とお母さん。
ちゃんとやってるよ、見ればわかるでしょ。
ローヒールのパンプスは、動きやすいけど何だかすぐに疲れちゃう。
ね、シャツは白色でいいかな?
真剣に聞いたのに、いいんじゃないのなんて投げやりな返事。
大事な娘の初出勤日だっていうのに、ね?
ああほんとにどうしよう!
…明日、ちゃんとできますように。
作品名:Thinking Time 作家名:鎖霧