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珍アルバイトパレード

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 マツダ氏はアサヒカワ氏から時給三千円を受け取った。なんのことやら分からなかったマツダ氏は、ただただ悪魔の背中が去って行くのを呆然と見ているしかなかった。
 そんなことをやっている内に、アサヒカワ氏の胸にふとあの憎たらしい気持ちが浮かんできた。それは月に一度の囲碁教室で出会う元同級生のオオサワ君のことだった。
 オオサワ君は学生時代、アサヒカワ氏と同じ女性を好きになった。そしてその女性を取り合った末、オオサワ君が勝利した。そのことを毎回の囲碁教室で未だに自慢してくるのだ。オオサワ君は本当に性格が悪かった。性格の良すぎた彼女は、そんなオオサワ君の性格をも受け止めてしまえるほどの許容量の持ち主だったから彼と結婚したのだ。
 そして毎度のごとく話を聞かされるたび、こんな老人であるにも関わらず、アサヒカワ氏は嫉妬の炎で胸の中が燃えるのであった。
 アサヒカワ氏は知り合いの看板屋に電話をかけた。
「もしもし、サイトウ社長かね。ええ、元気でやっているよ。久々に仕事の依頼があるんだが、サイトウさん、『頭上注意』っていう看板を作ってくれないかね。え、それをどうするんだって?いや、私には宿敵の男がいるんだがね。それを男の頭に落としてやりたいのだよ。君、それもまとめてやってくれるかね。え、無理だって?いや、金は弾むよ。え、絶対嫌だって?どうして頼まれてくれないんだ!」
 怒鳴った途端、電話は向こうからガチャンと切られてしまった。
 アサヒカワ氏はぼそりと呟いた。
「叶わない事があるほうが人生面白い」
作品名:珍アルバイトパレード 作家名:ひまわり