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5年

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『あ…。だれ?』
『だれ?って…。こっちのセリフだが。』
『僕は…夕(ユウ)。櫻夕(サクラユウ)。』
『そうか。俺は宇條司(ウジョウツカサ)だ。』

俺(当時20歳)と夕(当時9歳)は出会った。俺が一人になるための場所として使っていた秘密基地に夕がいたのだ。
夕は物静かで9歳の割に大人びていた。そのため、秘密基地ではよく会っていた。

…というより、俺が行くことを見透かしたかのように俺が行くたびにそこにいた。



あれから5年もの月日が流れ…。俺は25歳、夕は14歳になったわけだが、夕は中2のため反抗期?か、思春期かわからないがなんか、冷たくなった。お兄さんは悲しいっ!!


……まあ、夕は昔からどこか冷めた性格というか、バサバサものを言っていたのだけど…。

―――5年前
『なぁ、夕。お前いつも何してるの?』
『勉強。』
『勉強??だからこんなに白いんだぞぉ。もっと外であそん……』
『僕は司さんみたいにはなりたくないから。僕は、大学で“いがくぶ”っていう所に入るんだよ。』
『俺みたくなりたくないってなぁ。俺だってなぁ、こう見えてもT大の医学部だぞ。』
『!!ほんとにっ!!』
『…お、ぉう。』
『すごいっ!!司さんみたいな人でもはいれるんだねっ!!』
『……』



こんなことは日常茶飯事だった。だが、最近は前にもまして冷たくなった。
この前なんて

『おぅ!夕!!』
『司さんさぁ、25にもなってこんなとこ来てていいの?ニート…。』
『うるせぇッ!!俺だってなぁ、仕事がねぇときしかきてねぇんだよっ!!つーか、お前彼女いないわけ?』
『バカじゃない?恋愛に時間使うくらいだったら勉強するよ。』
『はぁ……。(もったいねぇ。こいつ顔はいいのに…。顔は…。)』
『なにため息なんかついてるの。司さんは恋愛なんかしてるからそんなんになったんでしょ。』
『んとに可愛くねーのなっ!!』
『男に可愛いとか思われたくないね。』


こんの、ガキィー!!って感じだ。といっても実は俺、ゲイ。こんなのがネコになるために生まれたようなやつ、絶対手に入れたい。て言うか好きだ。もちろん、初めて会った時からそう思ったわけじゃない。
いや、初めて会った時もかわいいとは思っていた。
なのに…あいつがぁ……

『司さんっ!!僕、卒業しましたっ!!』
『おぉ、おめでと。』

あのとき、平然として答えたけど心臓はバクバク。あの瞬間好きになった、と思う。
あの夕が、やっさしい微笑み浮かべて小走りで俺に近付きてきたんだから当たり前。かわいすぎた。


「ちょっと司さん。なにニヤけてるんです。キモチワルイ。」
「夕!!おまえ、今日も来たのかっ!!なんだ、気が合うなぁ。」
「別に。」

ツンデレ!!顔そむけるとか反則ぅーー!!

「それより、もうすぐテストなんだけど…教えてよ。理科の電気のところ全然わかんないんだ。」
「おまえがっ!?」
「だから言ってんでしょ。んーと…並列だと電流は一緒??あってる??わかんないぃ。」
「しょーがねーなぁ。教えてやるけど、ここは寒いから俺んち行こう。」
「え?いいの?」
「おう。きたねぇけど。」

俺と夕は俺の車に乗り込んだ。

「ねぇ、いつも思うんだけど秘密基地の前にこんな車置いたら目立つよ。」
「あ、まぁな。」

お前をいつでもお持ち帰りできるようにとは口が裂けても言えない。

「この車さ、いくらするの?」
「えー、○○○○万円」
「……」
「おれ、ボンボンだし。」
「うざ。」

「うざ」って…。ほんとのことだし。

「あ、ほらついたぞ。」
「ボンボンの割に普通の家に住んでるんだね。」
「まぁな。」
「おじゃましまーす。」
「おお。なに飲む?」
「ココア」
「え…?」
「ココア」
「……」

何だよココアって!!かわいすぎるだろぉ!!

「何?悪い。」
「いいいいいいやぁ、悪くはないけどぉ?」

赤くなるんじゃねぇー!!もう、すでにちょっと…。

「もうっ!!早く勉強教えてよ。」
「おっおう!」

それから理性を保ちつつ勉強教えてたらいつの間にか外は真っ暗。

「もう暗くなったから返れよ。送ってくから。」
「…やだ。」
「やだって……。小学生かよ。」
「うるさいっ!!いやだ!帰んないんだっ!!」

あの静かな夕が叫んだ。

「どうした…?」
「お母さんが…勉強勉強って…。もう、壊れる…。疲れた…。」

んー。どうしたらいいものか。あ、

「じゃあ、泊ってけよ。」
「いいの!?」

そんなにうれしいか?

「おー、いいけどよ、着替えとかどーすんだ?」
「司さんの貸してよ。」
「いいけど着れんのか??でかいんじゃね??」
「小さいよりいいよ。だからいいでしょ?」

俺は理性が失われないことを刹那に願った。




そういや、そろそろ飯か…。

「おい夕。飯何食う??」
「何でもいいよ。何かあるの??泊めてもらうんだし、何か作るよ。」
「お前、料理できるの?」
「なめないでよ。そのくらいできる。」

そういうと夕は「ちょっと、冷蔵庫見せてね。」と俺にことわり、冷蔵庫の中を物色し始めた。
こうゆうとこ、しっかりしてんだよな。

「材料的にカレーでいい??」
「あぁ。カレー粉はそこの引き出しに入ってるから。」
「うん。じゃあ、ちょっと待っててね。」

―――20分後
いいにおいがする。どうやら本当に料理はできるようだ。

「できたよ。食器は勝手に借りたいけどいいかな?」
「あぁ。うまそうだな。」
「市販のカレーなんて誰でも作れるでしょう。」
「お前…いま、料理できない人全員を敵にまわしたな。」

そんな、誰にでも簡単に作れる市販のカレーをおいしく完食した俺は夕が食器を片づけるのを待っている。

「おまえさ、今日まだ勉強するわけ??」
「んー。どうしよ。」

洗い物をしている夕はカレー皿を洗いながら声だけで返してきた。

「まだ教えてほしいっつーならおしえるけどよ。」
「司さんも疲れてるだろうし、僕も今日は勉強したくないかな。たまにはいいよね。」
「いいんじゃね??今日くらい羽伸ばせよ。」
「うん。そうするよ。」
「それ、洗い終わったら先風呂入れよ。着替えとかは入ってる間に置いとくからよ。」
「いいの??ありがと。お風呂どこ??」
「そこ出て左にすぐある。」

あいつは洗い物が終わったらしく「じゃあ、お先に。」と言って、風呂場に行った。
俺は自分の部屋からスウェットと、下着とタオルを持ってきて風呂場に向かった。

「おい。ここにおいとくぞ。」
「あ、うん。ありがとう。」

       ◇
僕がお風呂からあがってく来ると司さんは寝ていた。

「あがったよー。って寝てる…。」

僕は、司さんのことが好きだ。
だから、足が勝手に司さんの元へと向かっていた。キスしようとして顔を近づけると

「ん…ゅ…ぅ…?ゆう…夕!?」
「あのっ、これは、ちがっ!!その…」
「『キスしようとしました』ってか。」
「……」

ほんとのことになにも言えなくなってしまった。
黙りこくっていると、司さんが口を開いた。

「要するに俺のこと好きなんだろ?」
「えっ!?ちがっ…」
「俺は好きだけどね。お前のこと。」
「え…?」
作品名:5年 作家名:のん