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茅山道士  鵬退仙

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等が再び人間界で巡り合って結ばれるまでふたりの糸は消えないのだ。なぜ、初め麟が死

籍の中身をのぞ覗いた時、麒氏の名前が見当たらなかったかという理由はふたつある。ひ

とつは麟は麒麟の章ではなく、普通の村別帳簿を見たからで、もうひとつは麒氏がまだ城

隍神の裁きを受けておらず彼女の居場所が確定していなかった為である。鵬仙人も最初は

麒氏が消滅したと思っていたが、ふと思い返して冥府の役人に調べさせて真相を知った。

笑い話にでもなるような・・・・と思ったがまさか麒氏が死んだと信じている麟に『それ

は偽りだった。』とは言い難かったので試験のついでに教えようとしたのである。おそら

くふたりが出会うのは次に冥府から人間界へ戻る時だろう。
「今のおまえは、わしに生命を預けたのだから茅山道士の系譜の上を流れてもらう。その

秘術を用いて悪意ある者は打ち破り、志怪の類いは魂を鎮め冥界へと送れ! それが今か

ら五十年間のおまえの仕事だ。」
「はい、恩義あるお師匠様の為、無事に系譜が流れるようにいたしましょう。」
 麟は麒氏が存命したことで安堵したのか微笑み歌うように師匠に言った。







「緑青、戻った。」
 鵬が緑青の部屋の前でそれだけ言うと自室だった部屋へ麟共々雪崩れ込んだ。その声に

慌てた緑青が器物破損と小さな衝突を乗り越えて飛び込んで来た。あいかわらず精神過多

な人物である。いや、人間味が多すぎるというところだろうか。離れていた魂と身体が合

致して麟が起きて来た。緑青の慌て振りを笑うわけにもいかず困った顔をしている。
「あいかわらず、困った奴だ。何年経っても変わらぬな。」
 師匠である鵬仙人は緑青に向かって大笑いをしている。言い訳するには相手が悪過ぎる

出来れば麟にして欲しい、心から緑青は願った。ようやく笑いが納まると鵬仙人は麟の修

行が終了し緑青と共に行脚に旅立つ日が来たことを話した。麟を一般の道士として扱うよ

うに命じられた。道士の修行日数がわずか三か月強の麟を道士待遇で扱うなど長年修行し

て取得した緑青には信じがたい話だった。しかし、師匠の命令は絶対である。それに逆ら

う正当な理由がない。
「さて、わしはそろそろ戻るとするか。緑青、麟、さらばだ。」
 元茅山道士は重そうな身体を軽く空へ浮かべ雲高く登って行った。もはや姿は消えてし

まった。
「・・あの・・・緑青さん、私はどうしたら良いでしょうか。」
 ここでようやく緑青は麟の声を聴いた。別段驚くような奇声ではなかったが、話さない

と認識してしまっている緑青の頭は反応が遅れた。
「えーっと とにかく疲れただろうから今夜はゆっくり休むとしょうか。これからは私が

おまえの保護者役だ。少しばかり困った保護者だが、ひとつ頼むよ。」
「こちらこそ、右も左もわからぬ素人の私が道士の待遇を受けるのは恥ずかしい限りです

が、」
 こうしてふたりは諸国行脚の旅に出ることになる。
作品名:茅山道士  鵬退仙 作家名:篠義