キミの写真
「バーカ。
そんな暇あったら勉強しろ」
だから俺も、冗談っぽく言ってみる。もう勉強する必要なんて無いのに、咄嗟に出たのはそれだった。
上乃宮は笑ってくれた。普段クールな彼女の笑みは、それだけで魅力的だった。
「じゃあ、また明日な?
……抱き着いたりして悪かった」
和やかになった空気がいた堪れなくて、俺は逃げる。出口に向かって逸る足がやけに軽く感じた。
俺が彼女にしてあげられる事は無い。辛くなるだけだ、なんて言い訳を重ねながら、ドアへ手を伸ばした。
きっと、コレで良かったんだ。
付き合っていれば、とか思う日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。
だからきっと、コレで良かったんだ。
「───っと………どうした?」
背中に圧迫感を覚えて、それが上乃宮だと判った。けれど、直ぐに後悔する。
どうした、だと?
バカか、俺は……
「……少し、少し……だけ。
これで、おあいこでしょ……?」
ふるふると揺れる彼女の身体は、やはり温かかった。俺の背中は彼女のヌクモリを離したく無いらしい。
誰かの啜り泣きが、静かな教室に響いていた。