キミの写真
学生の時分、繰り返しの日常に憂鬱を覚えたことがある。
毎日毎日、同じ面々に同じ授業。代わり映えしない日々に緩やかな焦燥感を覚えたことがある。
今となってはそんな毎日が糧だったのだと理解も出来るし納得も出来る。が、あの頃の俺にはそんなことは到底無理だった。
……だから、毎日毎日同じことの繰り返しに何の意味があるんですか、なんて聞かれても、俺には答えなど与えられない。
なにしろ、俺にだって分からないのだから。
教師という立場になってもそれは変わらない。毎日が日々の繰り返し。
言ってやりたい。変わらない日常なんて、誰もが享受しているものなんだと。
……けれど。
「変わらないからこそ、毎日っていうのは大切なんじゃないですか?」
そんな、やけに達観した言葉を吐いたその女生徒――曽根川ひかるに出会い、俺こと向井新一の日常は確かに変わることになったと、そう言える。
くだらないと思うだろうか。
ありきたりと思うだろうか。
けど、俺にとってはとんでもなく驚くべき出来事。
何故って俺は――その女生徒と恋仲になってしまったのだから。