キミの写真
女子生徒───上乃宮玲奈は、長いブロンドの髪を弄んでいるだけで、何も言わない。だが、離れようともしない。
その顔は不安げで、何度か口を開こうとするも、それが阻まれているようだ。
「……どうした、上乃宮?」
「えっ……
あ、な……何でもない」
いや、明らかに何かあんだろ。
問い詰める事も出来る筈なんだが、そんな気力も湧かない俺が情けない。先生失格、だな?
彼女は踵を返し、そのまま教室を出ていってしまった。焦った様子は隠しきれてなくて、ドアに肩をぶつけていた。
そんな姿すら優雅で、金持ちは違うな、なんて考える俗っぽい俺。
ホント、情けねぇ……
「……はぁ」
心情は口からも出てしまうようで、今日何度目かの嘆息が漏れる。
溜め息をすると幸せが逃げる、なんて言葉があるように、今の俺に幸せなんか見当たらない。
だから何と無く、気晴らしに日誌を見てみる事にした。
普段は判子を押すだけだが、今日は熟読するつもりだ。
もしかしたら、ひかるが何か書いているかもしれない。なんて、下らない希望を抱きながら。