キミの写真
「ひかる、悪い! 本当はもっと早く謝るべきだったのに……」
――なんだろう、この纏わりつくような違和感は……?
「突然変な事聞いて悪かった!」
――周りの温度が下がっていくような、肌寒さは。なんだろう?
何故だろう、嫌な気がする。
「…………違う」
俺はひかるの声に顔を上げる。そして息を呑んだ。
ひかるは、今まで見た事の無い表情をしていた。
「僕は……私はそんな言葉が聞きたかったんじゃない。そんな言葉、聞きたくない」
ひかるが初めて見せた心の闇。その闇は、いつもの明るい笑顔と対象に、暗くて深かった。
「謝罪なんて……いらない。私はただ……」
その闇を創りだしたのが自分だと思うと、ゾッとした。
光だけを持つ人間など存在しない。人間は誰しもが深い闇を持っている。その闇は、こんなにも怖いのだ。哀しいのだ。
「私はただ、分かって欲しかった……。認めて欲しかった」
俺の安易な一言。そして愚直な考え。ソレをきっかけに崩壊していく、俺達の―――俺とひかるの関係。
「先生……さようなら」
この日を境に、俺がひかるをひかると呼ぶ事は無くなった。そして、ひかるの顔に光が灯る事も無かった。