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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔本物語

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 空かさず巨大ハンマーを構えたディティアがエムに止めを刺した。振り下ろされるハンマー。そして、その一撃を受けたエムの身体は煌く物体と化し、水が弾けと飛ぶように四方に弾けて消えた。
 最期を決めたディティアの頭をゼークが飛び上がりながら叩いた。
「ばか! アンタばかじゃないの、アタシの城壊してどうすんのよ!」
「莫迦とはなんだ。お主が城ごとエムを倒すと言ったのではないか」
「ここはアタシの城なの。アタシが壊すのはいいけど、アンタに壊されるのはゴメンよ!」
 部屋がミシミシと音を立てながら揺れた。天井からは砂埃が落ちてくる。
 辺りを見回したゼークが叫ぶ。
「部屋の外に逃げて!」
 部屋が倒壊する。ゼークは一目散に逃げて、ディティアは身体に似合わない素早い動きで、寝ているファティマを抱きかかえてセイと共に逃げた。
 四人が部屋を出た直後に会議室を倒壊してしまった。
 会議室の前には警備をしていた兵士の惨殺された死体が転がり、その先の廊下にもおびただしい血と死体が転がっていた。それを見たセイは思わず咽かえる。
「げほっ、げほっ……これを全部エムが……」
 エムが通った道にいた者は全てこうなっているに違いない。
 セイの前に立っていたゼークが、セイの後ろを見て叫ぶ。
「セイ躱せ!」
「!?」
 後ろを振り向こうとした時は遅かった。瓦礫の隙間から流れ出てきた煌く粉が手を形作り、セイの片足をしっかりと掴んでいた。
 足を引きずられてセイが床に転倒する。ゼークが動こうとした。ファティマを抱えたディティアが動こうとした。しかし、それよりも早く動いた者がいた。
「闇よ呑み込みなさい」
 どこからか伸びた闇の触手がセイの足を掴んでいた手を引きずり、手は煌く粉を尻尾のように引きながら、空間に空いた闇の中に引きずり込まれていった。
 空間に空いた闇が口を閉ざし、その奥の廊下には美しい黒衣の美女が立っていた。その女性の背中には美しい漆黒の翼が生えていた。
「二人とも詰めが甘いわよぉん。嗚呼、わたくしが参らねばどうなっていたことか……この借りは後で返してくださるかしら?」
 ディティアが黒衣の女性に向かって頭を下げた。
「危ないところを助けてもらい心から感謝する」
「お礼の言葉なんかいらないから、形として残るもので返してちょうだい」
 黒衣の女性はそう言って静かに微笑んだ。それを見てゼークは呆れたように言う。
「イーマ様は相変わらずガメツイ」
 セイを救った黒衣の女性は闇神イーマだった。この女性がイーマだと知ったセイはまた神に幻滅した。
 イーマはセイとファティマは見て鼻で笑った。
「期待薄の秘密兵器ね。こんなんじゃ〈大きな神〉に負けるわね、確実に。あ、そうそう、〈大きな神〉がいる場所に繋がる道を見つけたわよ。でも、空間がどうしても開けられなくてヒリカがそこで待機してるわ。それで空間を空けるのにみんなの力が必要なんだけど、アウロと引きこもりイズムはどこ?」
「二人ともアタシの城のどっかにいるわ」
「じゃあ、すぐに呼び出してヒリカと合流しましょう。セイとファティマも来るのよ」
 セイが頷くとイーマは静かに笑った。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)