死体お一人様
体中死体の臭いが染み付いている気がする
手なんかとくに、寝ているといつも死体の臭いが込み上げてきて、
これは思い出しているのではなくて、現実に俺から漂ってる臭いなんだろうかと
そんなただの俺の妄想だ
シャワーを浴び、その熱を感じる
俺から死体の臭いを消すために、そして、
俺は熱を感じている生きた人間だと実感するために
漂う死体の臭い
すでに俺の体も腐敗が進んでいるんだろうか
死体の臭いが染み付いたんじゃない、俺が、死体なんだろうか
「大丈夫か?」
「…何がだ」
「いや、顔色悪いし」
「いつものことだ」
子供に心配をされるほど、俺ってわかりやすい男?
「あ、そうだ、お前の父さんのことはもう終わったんだ
この後どうするつもりだ?お前もまだ餓鬼で、金無いだろうし、
どこで生活するんだ?」
「父さんの死体は、とりあえず親戚に頼んで葬儀だけでもしてもらう
家は、親戚に…は無理だから、どこか…」
「なんで無理なんだよ」
「父さんと母さんの結婚は元々両方の親から反対されてたんだよ
逃げるようにして街でてきたらしいんだ
だから、そんな2人の子供って知って、育ててくれるかどうか」
「なるほどね…」
「なぁ、あんたのところに住まわせてくれよ!」
「ええ!?やだよ!人を1人増やす金なんてない!」
「ぶうう!俺だって働くもん!」
「ええぇ…」
あれは、もう、無理やりだったんです!と言ってもいいだろう
その日も夜まで居座り、夜中に子供を外に追いやるわけにもいかないので、
結局その夜も泊まりやがった
それからズルズルと、もう何ヶ月たつだろうか
葬儀も軽く行い、結局こいつを殺した犯人もわからなかった
俺は警察官じゃない、それ以上のことはしてやれない
寂しかったこの家に、ほんの少しの笑いが増えた
こいつに俺の仕事を見せるつもりも、手伝わせるつもりもない
愛する者愛される者という存在のなかった俺には、すこし照れくさい存在かもしれないが
家族が増えるということは中々楽しいことなのかもしれない