公園
今日はゴールデンウィークの三日目。
やはり混んでいるな。
「パパ早く」
先に車から降りていた息子が急かす。
「ああ」
車を下りて公園の中に入る。
……。
人の多さに絶句せずにはいられなかった。
なんでこんなにいるんだ。
「パパ、アスレチックで遊んでて良い?」
「ああ、いいよ」
私の言葉を聞くと息子は遊具の群れに向けて駆けだしていく。
それを見送ると私は近くのベンチに腰かけた。
それにしても熱いなあ。
ポケットからハンカチを取り出し頬を伝う汗をぬぐう。
子供たちはよくもこんな熱い中で走り回れるものだ。
遊具の周りで走り回る子供たちに私は感嘆の念を覚えずにはいられない。
気がつくと息子は見知らぬ少年たちと一緒に鬼ごっこをしていた。
すぐに打ち解けるのは子供の得意技だ。
走りまわる息子を見ているとまるで子供の頃の自分を見ているようだった。
「早く走れよ!」
背後から少年の声が聞こえその少年が私の横を走り抜けていく。
あれは確か―私。
「待ってくれよ……!せめてもう少しスピードを……」
その後をヒイヒイ言いながら追いかけるあの少々肥満体の少年は……たしか直也。
私の親友だった少年だ。
今どこでどうしているのだろうか……。
私と直也は遊具に向かって走って行く。
よくこんな熱さで走れるもんだ……。
かつては私も息子の様に走りまわっていたのだ。
とたんに今の自分が情けなくなって来た。
少年の私は遊具の前で止まるとこちらを振り返って言った。
「「父さんもおいでよ!」」
その声に息子の声が重なる。
「「ああ、今行く」」
私の声に父さんの声が重なる。
気がつくと隣に父さんが腰かけていた。
同時に私たちは腰を上げる。
私と父さんは肩を並べながら遊具へ向かう。
そうだ、今の私はかつての父さんと同じ立場なのだ。
「父さん早く!」
「ああ、ごめんごめん」
私は父さんの体を追い抜いて走り出す。
その先にいる少年の私と親友の達也も追い越した。
私はすぐに息子の元に到達する。
背後を振り返ると父さんと少年時代の私たちがこちらを見つめていた。
「がんばれよ!」
そんな声が聞こえた気がした。
私は無言で手を振り返すと踵を返して歩き出す。
父さん私の背中を見ていてくれよ。