キミがいるセカイ 『雨の日のチョウチョ』
一番の難関は、横断歩道。
子どもの足だと、ちょっと駆け足しないと間に合わない距離。
「急げ急げー。」
アハアハ笑いながら、長靴をバシャバシャぬらす。
さすがお兄ちゃんの竜輝は向こう岸へとたどり着く。
(よし、竜輝は間に合った!)
振り返ると、千恵も傘を引きずりながら、への字口で懸命に駆け足している。
その表情に吹き出しそうになってしまった。
「千恵ちゃん、頑張ってー!」
と、励ました時、突然…。
「止まれー!」
千恵はそう叫びながら、ビシッと『気をつけ』の姿勢で立ち止まってしまった。
(え?何で??)
焦りながら信号を見ると…。
(赤信号…)
(あ、あぁ~!)
気をつけして立ち止まった理由は分かったのだけど、とりあえず今は渡り終えてくれ。
きれいな姿勢のまま動かない千恵を、荷物のように小脇に抱え、横断歩道を急いで渡る。
私に抱えられながら、ゲラゲラ笑う千恵。
気付けば二人はびしょ濡れ。
横断歩道の途中で赤になった時は…うんぬんを説明するが、ポカンとする千恵。
竜輝「お兄ちゃんの後ろをついてこないからだよー」
千恵「千恵ちゃん、止まれーできたよ?」
お兄ちゃん風を吹かす竜輝と、いまいち理解できない千恵。
ため息をつく私。
作品名:キミがいるセカイ 『雨の日のチョウチョ』 作家名:柊 恵二