小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

茅山道士 かんざし1.5

INDEX|6ページ/6ページ|

前のページ
 

 その言葉を聞いて青麒麟はハッと気付いた。以前、かの仙人に諭されたと同様のことを転生した麟も語ったのだ。青麒麟はじっと麟を見据えた。かの仙人と麟が重なって青麒麟の目には写った。黙って自分を睨んでいる青麒麟を見て、麟は恥ずかしそうに、
「きっと、あなたはそのことに気付いておられますね。すいません。余計なことを申しました。」
 と、頭を下げた。
「いや、ありがとう。麟。俺は目から鱗が落ちたようだ。策明兄や角端兄が、おまえを大切にしている理由がわかったように思う。今日、麟と逢えて本当によかったと思っている。」
 心底、感心した青麒麟は麟に頭を下げた。青麒麟の様子が大袈裟なので不思議そうに麟は微笑み返した。
「麟、ずっと仙界に居着いたらどうだ? そうすれば毎日好きな時に逢いに来れるし、怪我が直ったら俺がいろんなところへ案内してやるぞ。蓬莱山とか昇竜山とか珍しいものがたくさんあるぞ。」
 その話しを黙って聞いていた麟は大きく頭を振った。自分は人間で今ここでこうしているのもいけないことだと感じているのにどうして仙界に残ることができましょうかと答えた。
「それに私には師匠から譲り受けた道士の術を次の世に残すという約束があります。そのために一度死んだ私を師匠が冥界から呼び戻してくださったのです。その恩に応えなければなりません。」
 麟の足枷は五十年にも及ぶ。しかし、麟は自分の最愛の恋人に次の世で逢うために師匠との約束を破るわけにはいかないのだ。青飛は麟のはっきりした拒否にも納得した。それはせっかく転生し自分の望みをかなえた仙人に再び窮屈と仙人が感じた仙界へ戻ることを意味しているのだ。無意識にも麟はそれを嫌がっているのだろう。あたりまえだな、と青麒麟は自分の発言に少し後悔した。
「そうか…師匠との約束では仕方ない。では、ここにいる間、逢いに来てもかまわないだろうか。もっと、おまえと話したい。」
「それは構いませんが…、あなたのお兄さん方がお許しになればです。」
「うーん、どうだろう。内緒というのはだめかな。」
「内緒はきっと無理ですよ。私の側には常に誰かがいらっしゃいます。まだ、右手の自由がききませんので助けていただかないと何もできないのです。」
「うーん、そうか。お許しは難しいかもな。兄たちは人界と俺がかかわるには俺の経験が少ないといつも言うのだ。おまえのところへ来るのも随分頼み込んだ。」
 青飛が頭をひねって妙案を思案している側で麟はその様子をおとなしく見守っている。自分と同い年かと思う程にくだけた気のおけない人物に好感を持っている。
「むずかしいなあ。角端兄は本当に狂暴なんだ。そうそう、麒麟姿の時にな、鼻っ柱を叩かれるのが一番堪える。あれは痛いなんてもんじゃないぞ。目から火花が飛び出るとはあのことだ。麒麟の弱点は麒麟が一番よく知っている。まったく……」
 怪我人が小刻みに肩を揺らしてまた呻いた。だが、もう青飛は気にかけない。傷には響くだろうが、麟が楽しそうに笑っている顔がずっと見ていたいと思えた。
 二人が会話に夢中になっているところへ策明がやってきて、背後からひょいと麟を抱き上げた。
「あまり外にいては身体が冷える。さあ中へ入ろう。」
「策明さん、自分で歩けます。」
 抱き上げられた怪我人は、策明の腕からゆっくりと降りて、兄の出現にまだ呆然としている青飛に手を差し出した。
「とても楽しゅうございました。」
 青麒麟も立上がり、自分も手を差し出した。白麒麟に促され麟はゆっくりとした足取りで館へと帰っていった。館の前では黒麒麟がどっかと腕組みして迎えている。
「どうだった。青飛。」
「よくわかった。俺は心底安心した。顔は違うが心根は変わらない。あの時のままだったよ、策明兄。」
「あの子は初めて転生した姿だから、元の心が色濃く反映しているらしい。私や角端ですら見間違いそうになる。では要件は果たしたな。もう逢ってはいけないよ、青麒麟。」
「少し残念だけど、約束は約束だ。今はおとなしく聞き分けるよ。」「こらこら、今後ずっとだぞ。」
「それは保証できないな。ハハハハ…」
 笑いながら青麒麟は麒麟の姿に戻って中空へ舞い上がった。言う事をきかないと叱ろうとした白麒麟の頭上を二三度旋回して飛び去った。若いなあと策明はその姿を羨ましく見送った。もう自分にはそんなに執着するものがないのだ。例え今、今後麟と逢うなと角端が真剣に命令すれば、おそらく自分は従うだろうと確信できるのだ。自分がぼんやりと東海へでも旅する間に麟は寿命を終えてしまうのである。そんなはかない存在に、あれほど熱くなれる青麒麟はまだ若いのだ。しばらく中空を眺めて策明は物思いに耽った。
「あの仙人はきっと私のようになるのが怖かったのだろう。長い人生の間に何にも感動しなくなる、そんな人生に……それは正しいのかもしれないなあ……。でも、麟のお陰で少し気持ちが動いている。感謝しなくてはならないかなあ……」
 誰かが白麒麟を見ていたら、おかしくなったかと思うほどに白麒麟は笑っていた。その姿は昨夜の高貴な姿とは対称的ではあるが、それもまた美しい絵画のようであ

作品名:茅山道士 かんざし1.5 作家名:篠義