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とある一日

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 昨日も眠れなかった・・・・





 ここ何日か上手く眠ることができない。その原因は夜の暑さではないと感じ始めたのはつい最近のことである。
 僕、西野誠はそんなことを考えながら動かない頭をどうにか持ち上げて学校へと向かっていた。いつも通りの時間にバスに乗り込むと、今日もあの子が一番後ろの座席に座っているのが目に入った。名前すら分からないが、彼女は決まってこのバスに乗っていて、小さな本に目を向けている。彼女が特に可愛いと言うわけではなかった。ただ、誠の中で彼女の存在が日増しに大きくなっているのに気付き始めており、いつか話しかけようと言う気持ちだけが募っていた。


 またあの子が乗っている。今日こそ話しかけようか・・・・


 誠はさっきまでぼんやりとしていた目を擦り、いつも通り一番後ろの座席に向かっていった。目の端に映る彼女を横目にまたぼんやりとバスの中を眺める。平日のこの時間帯は通勤や通学に使われるだけあり、しばらくバスが進んでいくとすぐに満員になってしまう。気付いたらもう彼女と自分との間に他の人が座っていた。


 今日も話せなかった。まぁ明日もこの時間に乗れば良いか。


 そんなことを思いながら自分が降りるバス停に着くのを待った。彼女は自分より後のバス停で降りることは前から知っていたし、制服を見ても近くの学校だと分かる。
 誠は目線を窓に向け、頬杖をついて外を眺めた。行きかう車、バイク、人・・・・いつもと変わらぬこの景色。自分は今後どうなるのだろう。彼女に話しかける日は来るのだろうか。話しかけたとして、どうなるのだろうか。そんなことを考えていると勝手に瞼が閉じていく。しばらくすると音も遮断され、暗闇の中に彼女の横顔が写った。その横顔を消すまいと誠はゆっくりと力を抜き、夢の世界へと吸い込まれていった。
作品名:とある一日 作家名:ムーヤ