あたしとリツコの徒然草
天国と地獄
あたしは階段を上っている。
とたん。とたん。と、上っている。
あたしは階段を下っている。
とたん。とたん。と、下っている。
その階段は天の果てまで届いているが、地の底まで続いている。
あたしは階段を上っている。
とたん。とたん。と、上っている。
あたしは階段を下っている。
とたん。とたん。と、下っている。
ただ、あたしは目隠しをされているので、もう、上っているのだか下っているのだかも分からない。
それでもあたしは階段を上っている。
それでもあたしは階段を下っている。
とたん。とたん。という、自分の足音だけを聴きながら。
その階段がどこへ向かっているのだか、あたしには分からない。
ある人は天へ。と言い、ある人は地へ。と言う。
あたしには真実が分からないので、ただ、進んでゆく。
とたん。
とたん。
とたん。
あたしは一つだけ知っている。
あたしの周りでざわめいている人達もまた、目隠しをされてこの階段を上って、そして下っている人なのだ。
その階段が天の果てまで届いているのか、それとも地の底まで続いているのか、本当のことは誰も知らない。
だからみんな、自分の足音だけを頼りに進んでゆく。
とたん。とたん。という、足音だけ。
「とたん。とたん。」
と、あたしが口ずさむと
「ぺたん。ぺたん。」
と、リツコが返した。
何のことだかも分かっていないクセに調子を合わせるリツコが可笑しくて、
あたしは
「あはは」
と、笑った。
「とたん。とたん。」
「ぺたん。ぺたん。」
「とたん。とたん。」
「ぺたん。ぺたん。」
作品名:あたしとリツコの徒然草 作家名:ハル