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太陽の休日

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 そう、自分自身よく分からないけど、カヅキの夢はものを作ること。生み出し続けること。それが誰かの役に立ったり、感動を呼んだり出来たらいいなあなんて、ぼんやりと考えていた。でもそれが何であるのか分からなくて、ずっと苦しんでいた。だって私にはなんの才能もないんだから……。
「よし、じゃあ砂場行こう! 砂場行ってなんかつくろう!」
 キョウコが声を張り上げる。
「なんかってなに? なにつくればいいの?」
 ユリが問い返す。
「知らね。つくってるうちになんかになるんじゃん?」
 そう言ってキョウコはバタバタと駆け出した――後ろ姿が本当に子供みたいだ。でも。
 そっか――何が出来るか分からなくても、とりあえずやってるうちに形になるのかも。イビツでもいい、挑戦して完成させなきゃ。
 カヅキには、具体的にこれを作りたい、という欲求がなかったのだ。でも、やっぱり何かを作るのが好きだった。楽しかった。
 図工の時間に作った貯金箱とか、中学生の頃の卒業制作とか……。それらはずっと形になって残り続けるのだ。たとえ作った本人が、そのことを忘れてしまっても。
 三人は砂場で、あーでもないこーでもないと言いながら砂をこねる。
「やだ、粘土みたいで楽しーっ」
 そう言うユリの頬には泥がついていて、それがなんとも言えず可愛らしい。水分を含んだ砂はひんやりとして、触っているだけでも気持ち良かった。
「いいねえ泥遊び! ……泥団子完成っ!」
「あははは、どーすんのそんなもん作ってさー」
「お前に投げるのさ。えいっ!」
 ちょっとやめてよ、あたしやられたらやり返すよ! カヅキも負けじと、掬った泥を投げつける。新品のレインコートがもうドロドロだ。
 
 休日は休む為のもの。でもたまにはこうやって、馬鹿みたいに遊ぶのも悪くないね。人生には息抜きも寄り道も必要だもの――なんつって。
 カヅキはふと空を見上げた。ああそっか……太陽だって年がら年中カオ出してたら疲れちゃうもんね。たまにはゆっくり休まないとね。
 今日と明日が例え雨でも、そして桜が散ってしまっても――何日か後にはまた会えるよね。
 今日は太陽の休日。どしゃぶりでびしょぬれでも、カヅキの心は晴れ晴れとしていた。

了 
作品名:太陽の休日 作家名:紅茶檸檬