私の彼は宇宙人
あの変てこなメールがまるで嘘みたい。記憶にないのだろうか?
翔は美香の話に真面目に聞き入るし、熱く電子工学の話などもする。
美香の目に、翔の前におかれたおしぼりが入った。
「ねえ、おしぼりで脇なんかふいてないよね」
翔はその言葉に一瞬ナンのことなのかと首を傾げたがすぐ、他の話題に移った。
「今から中華食べに行こうか。俺レポート書かなきゃならなくて頭痛いよ」
中華は翔の好きな料理だ。
「うん、中華いいね。翔のゼミの教授って厳しいんだってね」
「怖いぜ〜! たぬきおやじって皆言ってる」
「ねえ、翔って茄子好きなの?」
翔はその質問にきょとんとした。
「別に。どっちかというと苦手かなあ。美香は好きなの?」
「嫌いじゃないよ」
美香はわからなくなった。
今目の前にいるのは、知的な雰囲気漂うイケメンなのだ。
じゃあ、さっきのメールはナニ?
私には見えているのに、彼にはそれが見えないのだろうか。そして自分の行動に対する事実も見えてないのだろうか。
「どうしたの美香?」
翔が優しく尋ねた。
「なんかなあ……」
美香は考え込む。
5年後――。二人は結婚した。
一人娘のゆうかとの三人暮らしの家庭は平穏だ。
翔の可笑しなメールはアレ依頼届かない。
ヨチヨチ歩きのゆうかがバブバブと、片言で何か喋っている。
「かまぼこのいたのうえに、ちくわのせていい」
終わり