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私の彼は宇宙人

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地下鉄の出口から路上に出ると、秋の夕日が傾きかけていた。

美香の腕時計の針は5時をさしている。
「いけない、又待たせちゃう……」

急ぎ足になる。
翔のことだから又早めに来て、あれこれと奇妙なメールを送ってくるのだろう。待ち合わせのティルームまでは徒歩10分。

携帯メールの着信音。やはり翔からだ。
歩きながら開いて見る。連続5通が入っている。

「おしぼりで脇を拭いたよ!」

「かまぼこの板の上にちくわ乗せていい?」

「美香の股の下で暮らしたい」

「風呂にモズク入れていい?」

「一緒に茄子を育てよう」

支離滅裂な文字がならんでいる。
美香は頭がくらくらした。
彼って、精神的に障害があるのだろうか?
それともただの二重人格?

美香は大学3回生。文学部だ。
翔とは、学生食堂で2ヶ月前に知り合った。
電子工学専門の、見るからに優秀そうな整った面立ちの若者だ。

何故か話が合い、二人は付き合い始めた。
といっても、肉体関係はおろか、手も握ったことはない。
話題と言えば、彼の専門の電子工学の話か、美香の文学論のどちらかだった。
真面目すぎる彼にいささか物足りなく思うときもある。

しかし、何故か二人はうまがあう。

学生のほとんどはコーヒーを飲むといえばドトールかスタバなのに、翔はちゃんとした喫茶店が好きだ。
その点は美香も同じだから、たちまち意気投合して、いつもこの喫茶店で待ち合わせるようになった。

翔はいつも待ち合わせの20分も前に来る。
そして、やって来る美香に連続携帯メールを送ってくる。
それが楽しいらしい。
でも、その内容が支離滅裂なので、初めてそういうメールをもらった時彼女は仰天した。

しかし会えば、全然フツーの翔かいる。普段のメールもごくごく普通だ。何故かこの喫茶店に行く道のりだけに限り可笑しなメールが来るのだ。
楽しんでいるのだろうか。違う自分に変身して……。

喫茶店のドアを開けると、奥の席から翔が手を振った。
窓際の丸いテーブル。いつもの定位置だ。

「お待たせ。いつも翔は早めに来てるんだね」

「ボクは人を待たせるのが苦手だからね」

「メール見たよ。ナニあれ?」

美香が大げさに携帯画面を広げて見せるが翔は反応無しだ。

「美香、キミが今読んでる村上春樹作品の感想聞かせてよ」
話題は違う方向に進んでいく。
作品名:私の彼は宇宙人 作家名:haruka