海竜王 霆雷 顔見せ2
神仙界の学者である東王父は、深雪が悩む難問についても、ちゃんとした回答を携えてくれていた。後見という立場ではなくても、関われるのだと知らせればいい。深雪の力になりたいということなら、それでもいいのだ。あとは、深雪当人が、各人に礼節を尽くせば、誰も無理強いなどできるはずがない。今や水晶宮の主人としても、竜族最高次位としても深雪は、しっかりとした基盤を築いている。以前のように頼りないと言われる評価も覆せるほどだ。
「さすが、碧が育てた子です。本当に立派な青年に育ちました。」
「碧には子育ての才能があったのやもしれないよ、あなた様。」
「ほほほほ・・・では、いつか戻りましたら、竜族の子育てにでも参加させましょう、あなた様。」
とても長い時間のかかることを、夫婦ふたりして語り合って笑った。まだ、義理の息子は人間界で飛び跳ねている状態で、戻ってくるつもりはない。だが、そんなことを想像することに罪はない。
公宮より早々に退散して主人の私宮の庭に、ふたりは立っていたのだが、ふわりと、その横に、その孫が下りてきた。優雅に、涼やかに降り立つと、笑いかけた。
「東おじいさま、西おばあさま、みなが待っております。どうぞ、内へお入りください。」
昔のように、そう声をかけた深雪に、西母王が抱き締める。
「ああ、なんて嬉しいこと。昔のように呼ばれるのは、久方ぶりですよ、深雪。」
「これこれ、あなた様、独占はいけない。深雪、よく顔を見せておくれ。東おじいさまは、おまえの添い寝ができると聞いて嬉し涙が出たほどだよ。」
やや強引に、妻から孫を奪い、ゆっくりと、東王父も抱き締める。その言葉に、深雪は、「随分と育ちすぎていて申し訳ありませんね、おふた方。」 と、苦笑した。
作品名:海竜王 霆雷 顔見せ2 作家名:篠義