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ヒロセアリサ
ヒロセアリサ
novelistID. 26564
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海へ続く道

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 声のトーンだけで、ヒいたんだろうな、ってのはなんとなくわかったけど、なんか、情けなくってあやちゃんの方にしっかり顔を向けることができなかった。そして僕の情けない気持ちの発露は続く。
「昔みたいに、さ。もちろん物理的に一緒にいてほしいとかそういうんじゃなくて、なんというか……変わっていくのが怖いんだ。あやちゃんが、どんどんどっかに行っちゃうのが」
 あやちゃんはずっと無言で聞いていた。
「勝手なのはわかってるよ。だけど、やっぱり怖いよ。どうして成長しなくちゃいけないの? 仲が良かった関係も崩れていっちゃうなら、僕はもうずっとこのままでいい」
 声が震える。でも、この声の震えは、本当に涙のせいのか。止めることのできない成長、変声期のせいなのか。判別はつかないけれど。

「しんちゃん、声、ちょっと低くなったね」
久しぶりに聞く「しんちゃん」という響き。記憶の中のそれと寸分の変わりはないのに。
「ちょっとだけ、歩こうか」
「ちょっとって……どのくらい?」
「どうせだから、河口まで」
「それ本気?」
 少々突飛な発言に、思わず頬が緩む。ここから河口まで結構ある。少なくとも二十キロはあるんじゃないだろうか。
「マジじゃなきゃ言わないから」
 そう言って、あやちゃんは僕に構わず歩きだした。
「海が見たいんだよ」
「う、海?」
「そ。こういうときのテッパンでしょ、海って」
「多分、工場ばっかで砂浜とか期待できないよ?」
「それでもいいじゃん。海だよ、海。昔ながらのセイシュンだよ」
海に着いたら「バカヤロー」でもなんでも、とにかく一言大きな声で叫んでやろうか。同じ水場でも、プールに行くよりはマシかもな、なんてことを思って、僕はあやちゃんの後を追った。
作品名:海へ続く道 作家名:ヒロセアリサ