紅色の夜の下で
煌びやかな衣装を纏った人々が集まり、行われたダンスパーティー。
初めて訪れた社交界の光の洪水に飲まれ、目を白黒させる。
着なれない窮屈な正装に身を包み、緊張と期待で精神をすり減らしながらダンスホールを歩く。もともと丈夫ではない身体は人ごみに酔い、壁際を求めて彷徨い歩く。
疲労はいらぬ心労を呼び起こし、こちらを向く大人たちの視線に棘すら感じさせた。これは己が妾の子であるからだろうか。汚らわしい娼婦の腹に宿った子。
貧血からか、目の前が暗くなるような感覚を覚えながら、開かれたテラスの傍に寄り掛かる。
夜風を求めて、息を吸い込むと頭が痺れる刻み煙草の匂いが仄かに漂っていた。
ふと、隣を見ると闇のような大きな影が蟠っていた。
こちらを見下ろした血のように濡れた紅い瞳に射抜かれ、動くこともできずにその瞳を見つめ返し。
身じろいだ大男は僅かに肩を震わせ、こちらを見下ろし。
きらりと白い犬歯が口元から覗き、こちらに近づいてくるのを見て、やっと男が笑っていることを知った。
初めて訪れた社交界の光の洪水に飲まれ、目を白黒させる。
着なれない窮屈な正装に身を包み、緊張と期待で精神をすり減らしながらダンスホールを歩く。もともと丈夫ではない身体は人ごみに酔い、壁際を求めて彷徨い歩く。
疲労はいらぬ心労を呼び起こし、こちらを向く大人たちの視線に棘すら感じさせた。これは己が妾の子であるからだろうか。汚らわしい娼婦の腹に宿った子。
貧血からか、目の前が暗くなるような感覚を覚えながら、開かれたテラスの傍に寄り掛かる。
夜風を求めて、息を吸い込むと頭が痺れる刻み煙草の匂いが仄かに漂っていた。
ふと、隣を見ると闇のような大きな影が蟠っていた。
こちらを見下ろした血のように濡れた紅い瞳に射抜かれ、動くこともできずにその瞳を見つめ返し。
身じろいだ大男は僅かに肩を震わせ、こちらを見下ろし。
きらりと白い犬歯が口元から覗き、こちらに近づいてくるのを見て、やっと男が笑っていることを知った。