何時か来る崩壊に告ぐ
君のスカーフは首輪に似ている(利鞘+α)
※クロスオーバーが含まれます
俺、大学祭の委員になったんだ。利鞘のこの言葉に、豪炎寺は箸で掴んでいたプチトマトを落とした。
「急だな」
「そ、今日の朝、言ってきた」
「面倒くさがりのお前がよくやる気になったな」
「そうそう、そこなんだよ。大学祭の委員の上の組織って知ってるか?」
知らない、という顔の豪炎寺に利鞘は笑う。
「一番のてっぺんがさ、横森さんなんだよ。ほら、この間のノートの人」
「あぁ」
ようやく合点がいった豪炎寺が頷く。そして今度はプチトマトを行儀悪く箸で突き刺した。
横森の名前をあれから捜してみれば、意外にも多くの場所で伺い知ることができた。文学部、日本文学専攻の三年生。現執行部委員長、つまりは学生代表。隣に居た足立という女子学生は執行部副委員長。白を基調とした服装が目立つ、日傘がトレードマークの女。
「何だ、惚れたのか」
「違うって。ああいう年上のお姉さんって憧れてたんだよ。あの笑顔で命令されたらたまんないね」
「すまない、Mだったんだな」
「真顔で言うなよ」
利鞘は言わなかったが、横森に対するマイナスイメージだって勿論入手していた。体が弱くて頼りにならないとか、いつも保健室に居るとか、その割に単位を落とさないものだから教授に取り入ってるとか裏表があるとか。まあ、いたって普通の噂話だ。
しかし体が弱いだなんて大いに結構。医者の卵にしてみれば生きるレポートだ。別にあの睫毛が人工物だって、そんなことは問題ではない。
まぁ、せいぜい頑張れ、との豪炎寺の言葉に、利鞘は目を細めて笑った。
作品名:何時か来る崩壊に告ぐ 作家名:こうじ