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オーロラのたなびく地で。

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人影は、私が近づくにつれ、だんだんと消えていった。
そして、オーロラもそれに呼応してか、すこしづつ星空に薄れていった。
風の音も、また元のように冷たく戻りつつあった。

「ほら、これであったまって」
呆然と空を見つめていた私の前に、レニィは湯気の立つマグカップを置いた。
…いい香りの紅茶だ。
一口飲む、とても澄んだ味。
「おいしいでしょ、この雪解かして淹れてみたのよ」
レニィは自慢げに私に言った。
ほっ、と私の紅茶色の香気が風に舞う。

私は…ふと思った。
「ねぇ…レニィ」
「?」
「ごめん、この街出るの、もうちょっと延ばしてくれる?」

このオーロラを見て思った。
自分は、パパとママが…このオーロラを見ていた街を…捨てようとしていたことに。
今ここから出て行ったら、私は…両親の思いすら捨ててしまうんじゃないか、って。

きっと…オーロラ達は、私達の想いに応えてくれたんでは…
でなきゃ、風がこんなに暖かなわけないもん!

「ふぅ…あなた絶対に言うと思ってた」レニィは、ため息混じりに私に答えた。
「え…?」
「多分この景色見て、離れたくない!って思ったんじゃないかって感じたんだ…」
「うん…私、やっぱ捨てられないよ…ここを」
私は空を見つめた。
満天の星達は、今にもここめがけて降り注いできそうだ。

「しょうがないな、全く」
レニィはカップの紅茶を一息に飲み干すと、ぽんと私の肩を叩いた。
「え…じゃあ」
「私もあなたと一緒に残るよ、まだ勉強やり残した所あるしね」
その言葉が嬉しくって、私は思わずレニィに抱きついてしまった。
「ありがと、レニィ!」

ぼふっ
「わわっ!」
たまらず一緒に雪の中に倒れてしまう。
だけども関係ない、うれしさで一杯だから。


─ありがとう─


暖かな雪たちが、私の耳元でちょっぴりささやいたような気がした。


 ─終わり─