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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン-黄砂に舞う羽根-

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 ライザがこのような結論を出したのは、彼女自身が生命の創造主になろうと試みたことがあるからである。しかし、彼女は自分が納得できる結果を出せず、成功と言える例は一例もない。その成功の糸口が目の前にいる。ライザは心躍らせた。
 だが、問題はこれから?少女?をどう扱ってよいものか?
 せっかく手に入れたサンプルを壊すわけにもいかない。それに、小型魔導炉とも言うべき力を持つモノに、もしもなにかがあってからでは済まない。?失われし科学技術?はなにが飛び出すのかわからない、ビックリ箱のようなものなのだ。
 ?少女?の翼が微かに煌き、光の粒子を呼吸するように放出している。
「翼は内部に溜まったエネルギーを外に放出するためのものなのね」
 ライザは自分の言葉に自分で納得し、深く頷いた。
 翼は空を飛ぶためのものではないだろう。あのような形状と大きさでは、ヒトが空を飛ぶことは物理的に不可能だ。できたとしても、それは翼が羽ばたく力によるものではなく、他の力の働きによるものだろう。
 ライザの考えでは、翼は?少女?の原動力になっている魔導エネルギーを体内から外部に排出するためのものであり、翼から零れる煌めきは魔導のカス――廃棄物に違いない。
 立てた人差し指を唇に当てたライザは、甘い息を漏らし考え事をすると、なにかを思い立ったように白いコートの裾を翻した。
 電子ロックにカードキーを差し込み、暗証番号を紅いマニキュアを塗った爪で押すと、金属の扉が横にスライドして開いた。その先にいるのは?少女?。
 ブーツの踵を鳴らし、ライザは優雅な足取りで?少女?の横に立った。
 どこを見ているのかわからない?少女?の瞳に、しゃがみ込むライザの姿が映し出された。
「アタクシの言葉が理解できるかしら?」
 なんの反応もない。
「創造主に魂を入れてもらわなかったのかしら?」
 ?少女?の眼は死んでいた。
「でも、アタクシは見たわ。アナタの瞳に光が宿った瞬間を」
 それは?少女?が永い眠りから醒めたときのこと。?少女?は愛くるしい瞳をしながら、小さく呟いたのだ――『私と……同じ……』と。あのときと今、なにが違う?
「…… あの子の存在」
 唇を舐めたライザの脳裏に浮かぶ?少年?の影。あの?少年?が鍵に違いないとライザは確信したのだ。
「――となると、あのシスターがやはり役に立ちそうね」
 シスターとはもちろん、シスター・セレンのことである。人質としての効果が今発揮した。あとは、セレンを出しにアレンを呼び寄せればいい。
「さあ、アナタはアタクシと王子様に会いに行きましょう」
 ?少女?の腕を掴んだライザがゆっくりと立ち上がり、?少女?は抵抗することもなく、揺ら揺らと立ち上がった。
 虚ろな?少女?を外に連れ出そうとしたライザの足が止まった。
 静かだった部屋に通信機の音が鳴り響く。?少女?は音など聞こえていないように、なにも反応を示さない。虚ろなままだ。
 通信機に出たライザが艶やかに笑う。
「あのシスターも、見かけによらずおてんばさんだこと……ふふ」
 それは拘束中のセレンが逃げ出したとの連絡だった。
 掴まれていた腕を放された?少女?は、木の葉が舞い落ちるように床にへたり込み、ブーツを鳴らす音が遠ざかって行った。