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学園を制し者 第四話

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「私のご主人さまのお姉さまでいらっしゃいます美羽さまは、物心ついた頃から軽い二重人格のような症状を患われております。記憶は共有しているようですが性格言動などがまるで代わってしまうのです。仮に学校での美羽さまを『生徒会長モード』、家での美羽さまを『あまあま、お姉ちゃんモード』と呼びましょう」
「おーい、雪さんやーい」
「こうなった原因としましては、もともと『あまあま、お姉ちゃんモード』であった美羽さまが社長令嬢という立場上、なかなか親に甘えることもできず。もう一人の人格を作りだし面倒事をすべてそちらに任せようとしたそれが『生徒会長モード』の美羽さま。ちなみに名前は今考えたのであしからず」
「ゆーきやこんこん♪ あられやこんこん♪……」
「厄介なのは美羽さまがどちらの人格も受け入れ入れていること、つまり本人に治そうとする意思がないこと」
俺が渾身の力を振り絞ったギャグも軽くスルーされた。……むなしい
「本人にその意思がない限り私たちではどうすることもできません。ひとまずこのまま様子を見るとことになり、そして現在にいたるわけです。ご静聴ありがとうございました」
雪は恭しく頭を下げた。
「…………大丈夫か?」
俺は雪がしゃべり終えて一呼吸おいてからはなしかける。
「はい、少々異世界への電波的交信を試みていました」
「そ、そうか……」
この件についてはあまり触れないでおこうと思った。
これ以上触れるとこの世界の真理にも近づいてしまいそうだし……
「そんなことより。旦那さまたちをおまたせしています。早く中に入しましょう」
「そうだな……」
みー姉は話が長すぎたのか立ったまま、うとうとと船をこいでいる。
「……みー姉」
「うぅぅ……」
俺が肩をゆすってやると、みー姉はねむたそうにぐしぐしと目をこすった。
ちょっと、可愛い。
「……おんぶ」
「は? ちょっ! おい!」
いきなり、みー姉に抱きつかれてしまった。
「えへへ……しんちゃんの背中……大きい……」
えへへ……みー姉のおっぱい……大きい…………はっ!
一瞬トリップしてしまった。
みー姉は俺に抱きついた状態で再びすやすやと幸せそうな寝息を立て始めている。
「……雪、助けてくれ」
俺は我が家の家政婦さんに助けを求めた。
「………………結局、ご主人さまはおっぱいなのですか……私にも胸があれば……」
「雪?」
「……ご自分で何とかしたらどうですか」
「ご自分でって……なにを怒ってるんだよ」
「怒っていませんよ。雪はいつも通りです」
そう言うと、雪はスタスタとひとりで先に家に入って行ってしまった。
確かに、雪の表情はいつも通り砂糖の入っていない蒸し小豆のような味気なかったが、どこかいつもより冷たい印象を受けた。
(さっきまで機嫌がよかったのに……)
「……わけわかんね」
心にもやもやしたものを残したまま俺はみー姉を背負いなおし、雪の後を追いかけた。





先に、みー姉を二階にあるみー姉の部屋で寝かせ、俺は一階に降りてきた。
外見からはわからないが家の中は洋風で意外と一般的なつくりだったりする。
一般的な家と違うのは、何かしらの芸術品が等間隔で飾られていることと廊下が意味もなく長いことだ。
といっても、往復に何分も要するような廊下ではないので、すぐに高そうな壺の前のドアまでたどり着いた。
ここがリビングだ。
中から人の気配がする。すでにみんな集まってしまっているのだろう。
俺は中に入ろうとドアを開き
「こぉのばかむすこがぁぁああ!!」
「うぉっ!」
とっさに身をかがめた。
――ガッシャーン!――
背後で壺の割れる音がする。
「貴様ぁ! 父の攻撃をかわすとは何事だ!」
「いきなりドロップキックが飛んできたら誰でもかわすわ!」
なんだ……この家の住民はいちいち俺に飛びつかないと気が済まないのか?
俺は振り返ると同時に背後に立つゴリラを睨みつけた。
和服姿で割れた壺をふんずけてももろともしない、ゆうに2mはありそうなこの巨漢が俺の義父、新井コーポレーションの現代表取締役『新井 剛 (あらい つよし)』だ。
「何を言うかぁあ! 父の愛を受け止めてこそ立派な息子だろうが!」
「いろんな意味で重すぎて受け止めきれねぇよ!」
「貴様をそんな軟弱な男に育てた覚えはない!!」
「いやいや、2mの巨体を175そこそこの俺が受け止めるのは物理的に無理だろ!!」
「はいはい、あなた。落ち着いてください。信也も……」
今にも殴りあいを始めそうな俺と親父をあとから出てきた義母である『新井 美弥子(あらい みやこ)』がたしねめた。
「ああ言えばこういう! 貴様、反抗期か!」
「むしろ、あんたが反抗期だろ! つか、いったい何をそんなにキレてんだよ!」
が、母さんのゆったりとした声では、熱くなっている俺と親父の耳には入らない。
「もう、私の話を聞いてください」
「貴様は帰ってくる頻度が少ないのだ! 雪と美羽が寂しそうにしているのがわからんのかぁあ!!」
「ぐっ! そ、そういう、親父だって久しぶりの帰宅だろ!」
俺と親父は柔道のようにお互いの袖と襟を取り合い柔道のようにもみ合う。
「いいかげんにしてください二人とも……おこりますよ」
「ぐぬぅ! 言葉でいってもわからんのか! バカ息子が!!」
「それは、こっちのセリフだ! くそ親父!!」
俺と親父はついに本格的な喧嘩を始めようとして
「グシャリ」
………………………………ぐしゃり?
『ギッ…ギギギ……ギギ』と、まるで錆びついたブリキでできたロボのような擬音をたて振り返る俺と親父。
「あらあら、またおたまを握り潰してしまったわ……」
そこには、満面の笑みで、たたずむ絶対神がいた。
「は、はぁあっはっはっはっはぁあ! よくぞ帰ったぞ我が愛すべき息子よ!!」
「お、親父も仕事いそがしいんだろ? いつも俺たちのためにありがとう!」
俺と親父は互いの肩を組む。二人ともいやな汗が全く止まらない。
みー姉と瓜二つの母さんの顔は、今年43とは「なにかいいました?」まるでビーナスのように美しかった。
……正当な発言権すらないというのか!!
「はぁ……二人とも仲良くしてくださいね?」
「「……い、イエスマム……」」
うちの母さんの前では2mの巨体も現役男子高校生もかたなしだった……
作品名:学園を制し者 第四話 作家名:hirooger