キミがいるセカイ 『見えない誰か』
見えない誰か
子どもたちの、きゃあきゃあと楽しく遊ぶ声を聞きながら、夕食の準備にとりかかる。そんな時、携帯電話の着信音が聞こえた。
「もしもし?元気?」
母の大きな声。
自宅と実家は近いので、滅多に電話なんかかけてこない母。
どうでもいいような話がしばらく続く。
「で、結局なんで電話してきたの?」
「あ、そうだった。忘れてた。」
電話から、ゲラゲラ笑う声が響き、思わず電話口を耳から離す。
「あのね、今週、じいちゃんの1周期だから。」
「ああ…。」
眠るように亡くなった母方の祖父。
(もう1年がたつのか…。)
作品名:キミがいるセカイ 『見えない誰か』 作家名:柊 恵二