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いつもアナタのすぐ後ろっ!

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「……ぇ!?」

唖然としているソイツを突き飛ばす形で線路の外に押しやる。

前に向き直ると轟音を上げながら特急電車が迫ってくる。
ブレーキが軋み、辺りに大音量で甲高い金属音が響き渡る。
恐怖から足が竦み動けなくなりそうになるが、ミイラ取りがミイラになるんじゃシャレにもならない。
間一髪で俺も線路から跳び、難を逃れた。

「……っ! なんてことを!」

それはコッチのセリフだ。
つか、息上がってまともに喋れねぇ

「あなたまで死ぬところだったんですよ!?」

知っている、身をもって経験してきたばっかりだ

「信じられない……っ」

事実だ。

「…………おい……」

ようやく落ち着いたようだ、しかし怖かった。

「ぇ……?」

「お前は厄介なことをしでかしかけたな、電車、しかも特急、普通人身事故起こしたら後処理とかにアホみたいに金かかるんだぞ? ン千万くらいか?」

「……ぇ」

「知らねぇのかよ…… あと、はやくどっか行かねぇと損害賠償取りに警察とかなんやらが来るぞ」

俺はこれ以上の厄介ごとには巻き込まれたくはない、重い体を起こし、歩き出す。

「なんで、なんであんな危険なマネを……」

後ろからポツリと声が聞こえる。

「俺は、目がわりぃんだ。 時折物が歪んで見えて、色が何色かもよくわからない位にな」

息をのむ声がする。
同情ならもう聞き飽きた。

「あと、俺は学生の頃は天才とまで言われるほどの絵描きだったんだ」

「…………」

「でも、ある日突然目が悪くなった、俺は自分の生きる意味を失った、俺の全て、俺を俺と足らしめていた物は何一つ残らなかった、でも俺は死にたいとは一度も思ったことはない」

「そんな……」

「なんでかって言うとな、生まれながらに目が見えない奴だってこの世にはいる、一生寝たきりのまま過ごすしかない奴だっている、言葉を話すこともできない奴もいる、そんななかで、たかが目が悪くなった?色が分からなくなった? そのぐらいで死ねる訳ねぇだろが! 甘えてんじゃねぇよ!」

「っ……」

「だから俺は絶対に自分からは死なない、自殺は甘えだ、逃げだ、どんだけ絶望しようが人間はやり直せるんだ、立ち上がれるんだ、けどな、死んじまったらなにもならない」

俺は振り返る、少し歪んではいるが、今にも泣きだしそうな少女がそこに座り込んでいるのが見て取れた。
女を泣かすなんて、俺も悪い男だな。そんなくだらないことをふと思ってしまい、苦笑する。

「……だからよ、そう簡単に死のうとすんな 今はツラくてもきっといいことがある、生きてれば人間は必ず救われる 俺だって、明日には治療法が見つかるかも知れないって思いながら毎日を過ごしてる」

「っ……、そんな発想はありませんでした……」

「日野 一」

「ぇ…………?」

「俺の名前、今度俺の描いた絵でも見てみな 我ながら巧いと思うからさ」

………やれやれ、目立ちたがりという俺の悪い癖は治っていないらしいな。

「んじゃな、もう死ぬんじゃねぇぞ」

俺は振り返らずにそのまま家へ帰って行った。

あまりにも自分の発言が臭かったことに気付いたのは家に帰りついてからだった。