コンプレックスの檻
相原はくすくすと笑った。彼女は振り返り、闇夜へとその身を投じた。
僕は人形を持ち帰った。幸い玄関に既に姉さんの姿はなかったので、僕は声を掛けられる前に部屋に駆け込んだ。
袋から取り出した人形を椅子に座らせて、向かい合う。姉さんはもう僕の声に応えてくれない。第二の姉さんは確かに必要だった。僕を受け入れて、僕に優しくしてくれる姉さんが必要だった。
早速僕は姉さんの創作に取り掛かった。とは言っても、やることはそう多くはなかった。僕は人形に姉さんの服を着せて、姉さんのような化粧を施してやった。人形はあっという間に姉さんそのものになった。
姉さん。僕の呼びかけに返事はない。だが伸ばした手はその頬に触れた。姉さんはそこにいた。
僕は姉さんを抱きしめた。彼女は僕を優しく包み込んでくれた。一度離れて、僕は姉さんの瞳を覗き込んだ。
見返す眼が揺れ動く。唇が言葉を紡ぐ。
「気持ち悪いよあんた」