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セールス・マン
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しっぽ物語 5.眠りの森の美女

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 口ごもるようにしてGは言った。温野菜、スツールのサイン。これは最後に回す。まずは好きな建築と、車の話でも。Lの好みは何だったか。見舞い品はひとまず自腹を切り、カジノ一同と書き記したほうが良いかも知れない。協調性を見せ付ける。
「Lの指示なんだ」
 Cは奥まった眼を何度か瞬かせた。じきじきの指定。もしも自分がオーナーになったなら。もしも自分が。
「分かりました。今すぐうかがいますよ」
「頼む」
 重いため息の裏を読み、ほくそ笑む。所詮、セックス程度のことじゃあ。最後は才能が。
「相手は聖xxx病院の外科、308号室にいる。花でも持って行ってやれ。Lも退院次第見舞うが」
「L氏のところじゃないんですか」
 すとんと落下した喉元の熱さを感じるよりも先に、Cは思わず声を張り上げていた。
「聖xxx病院?」
「ああ、何でも犯罪の被害者で、精神安定剤を打たれて眠ってるらしい」
「でも、その手のPR活動は」
 自分でもどうしようもないほどそっけない声で、Cは返した。
「宣伝広報部の仕事でしょう。僕が行くわけには」
「そうなんだが」
「でも、今カジノの方でちょっと」
「トラブルか」
「そこまで大袈裟なことじゃないんですが」
 既に電源ボタンへ指を当てながら、首を振る。
「忙しいんです」
「来週までに頼む」
「約束できかねますね」
 押し付けられたという事実に、憤りを隠せない。けれど相手は腐ってもオーナーの身内だ。碌な奴がいない。義理の弟はあの通り、息子二人は穀潰し。
 あれじゃあ、オーナーが余りにも哀れすぎる。Cは心の底から思った。もし自分が後継者だったら……。
 首を振り、電話をポケットに押し込む。


 実現可能な未来を考えても仕方がない。今必要なのは、眼の前の実現不可能なように思える仕事への対処法だけだった。なにせCにはこの週末、第三ラウンジの模様替えという大仕事が残っているのだ。