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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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4.



 両親の結婚記念日の翌日。ミミリの十歳の誕生でもある今日。
「ねぇ、ミミリはさ。どんなマジェスターになりたいの?」
 幼なじみのツツジ・C(カラ―)・ロ―ドデンドロンが、そう尋ねてきた。
 学校の帰り道。
 二人は、公園の縁沿いに設置されたベンチの上に腰掛け、露天で買い食いした『天の川キャンディー』をほおばりながら雑談に興じていた。
 ツツジの両親曰く、彼女はミミリと同じXY型遺伝子を持つ同位体の双子なのだという。  ミミリとツツジは、遺伝子上においても人間関係においても、近しく親しい仲だった。
 春風が路地を通り抜けた。
 ツツジの、毛先にジャギ―が掛かった瑠璃色のセミショ―トヘアが風になびく。
 ミミリはそれを横目に見て、質問の内容に戸惑いつつ口を開いた。
「え、『どんな』って。んー…。考えた事なかったなぁ―」
 今の日々が永遠に続くと思っている九歳のミミリにとって、それは意外なことだった。父がいて、母がいて、ツツジがいて…。そんな、当たり前の日々がいつまでも続いていくものだと思っていたからだ。
「アンタバカねぇ、将来設計は大事よ―。今から考えておかないと。普通の人間に比べて、マジェスターの寿命は三十年あるかないかなんだからさー。今の内に自由を謳歌するのもいいけど、将来を有意義に過ごすための計画を今から建てておかなきゃ。じゃないと、この先後悔するわよ」
「ふーん。でもマジェスターとして皆を護るために戦う。そういう使命をはたすのって、素敵でカッコイイじゃないですか」
 それを聞いてツツジは片眉を釣り上げ、顔をしかめた。
「気楽でいいわね、アンタは。十三になる年の初めにはプランタリアへ入学して、ジュニアスク―ルで今やってる教練なんて”ママゴト”に思えるくらい厳しい、本格的なマジェスタ―としての訓練と勉強の日々に追われることになるのよ。んで、卒業したら、今度は軍に編入されて死ぬまでアクトゥスゥと戦う日々。人類を守る<偉大な超人>なんて大袈裟な扱いされてるけど、その人生なんて意外と地味なものよ」
「ええ!?そうなんですか」
「そうなのよー」
驚きの声を上げるミミリとは対照的に、ツツジは気だるそうに醒めたテンションでぼやく。
「う―ん、いや。そうじゃなくってね――…」
 マジェスターは優秀な遺伝子を調整して作られた超人である。反面、その寿命は短い。三十年超生きることが出来れば長命と言われている。
 それ故に、レベルの高い情操教育を施され、実齢よりも精神年齢が高く、その成長も早く進むよう『設定』されている。
 それでもミミリとしては、まだ九歳だと言うのに、同い年のツツジがそんなしっかりした考えを持っていることが、良い意味でショックだった。
「…――私たちまだ子供なのに、そういう将来の事って、まだ考えるの先でいいんじゃないかなぁ?って思ってたの。ツツジはすごいね。大人だねぇ。関心するよぉー」
「んな!?べっべつに。た…ったく、あったりまえよ。アンタがのんびりし過ぎてんの!」
 賞賛されるとは思っていなかったのか、照れくさそうに口を尖らせるツツジ。
「え…えへへ。そ…そうかなぁ。でも、ちょっとツツジ”普通”すぎません?」
「確かに私は、”変人揃い”のマジェスターの中でも”普通”って言われてるけどね。それを悪いと感じたことはないの。”普通”ってことは一見当たり前の事のように思えて、実は貴重なことなのよ」
 お嬢様のアンタには分からないだろうけどね。と、付け加えるツツジ。
 そう言われて、ミミリは「あ…あはは」と作り笑顔で答えるしかなかった。
 
 ――風を感じた。
 
 ミミリはふと空を仰ぎ見た。いつもと違う大気の流動を感じたからだ。
 大気を操る『能力』に長けたフリージア属だからこそわかる、些細な空気の変化。
 普通の人間ではまず気がつかない程の、些細で微弱な。
「さて、道草してるのバレたら、母さんに大目玉だわ。帰りましょ、ミミリ。ミミリ…?」
「ねぇ、ツツジ。あれ、なんだろう」
 彼方の空で、二つの流星が地上に落着しようとする瞬間を二人は見た。
 赤い流星と白い流星。二つの流れ星は、螺旋を描くようにして遠くの大地に落着した。
 次の瞬間。
 轟音が大気を揺らし、巨大な振動が地表を揺り動かした。
 続いて、遅れてやってきた凄絶な衝撃波の嵐流が二人を襲った。
 
 ――体が浮く。
 
 路上のタイルがめくれ上がり、ベンチや建造物、車両に人。あらゆる物がふわりと浮き上がる。次に、超音速の大気の津波が、浮き上がった有象無象達をどっと根こそぎさらい――
 紙吹雪のようにぶわりと――吹き飛ばした。