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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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(空間が開けた所なら能力を使った上で、持ち前の機動力を活かして相手を翻弄できるが、こんなに空間をギチギチに詰められたら俺の『能力』は役にたたねぇ…。ごまかしが利かないからな…。こりゃぁ、ガチガチに正面からやり合うしか無いか…。だが――)
 変異体のバリケードに阻まれるヒューケイン。手をこまねいている内にも<ラース・カーフ>
はズシズシと巨体を震わせ、通用路の奥へと向かい走り去っていく。その行き着く先は、脱出艇がある緊急脱出口区画。
(――クルーの八割は脱出したとは言え、まだ二割は残っているんだ。居残り組が奴と鉢合わせになったら最悪だ。悲惨なことになる…。行かせる訳にはいかねぇッ!)
 そう思い、ヒューケインは最後の一本となった裁断剣を手に握り、変異体へと斬り掛かる。
 本来の任務である『変異体の全撃滅』を忘れ、自分がマジェスターである事も関係なく、ただ人として、そこにある命と人々を守りたいという一心で。
 しかし、現実は無情だ。圧倒的な数で迫り来る変異体をたった一人でどうにかする事など出来ない。マジェスターは超人であるものの、ヒューケイン・D・プラタナスには映画やアニメに登場するヒーローのように、手をひと薙ぎするだけで超常を引き起こし目の前の敵を吹き飛ばすような力はない。
(畜生め、俺は無力だ。皆の力を借りなきゃ何にも出来ないんだからな。感覚の欺瞞なんて、ケチな事しか出来ない…。俺に出来るのはリーダーとして人材を適材適所に配置して、状況をコントロールし、マネジメントする事だけ…。俺に出来るのは精々それだけだ。そうだよ…。だからこそ…。だからこそ…――)
 ヒューケインは後ろを振り返る。
「お前の力が必要だ!ミミリッ!!」



「はい!!」
 ヒューケインの呼びかけにミミリは走りながら答える。
「お前の能力で、目の前の邪魔な連中を吹き飛ばしてくれ!!」
「わかりました!はぁ―――ッ!」
 ミミリの体と目から淡い光が立ち昇り、突風が巻き起こった。空間の大気圧が激変した事で乱気流が発生し、それは小規模の竜巻となった。
 竜巻は――ミミリに操られ――変異体の群れへと一直線に風切り音を上げて進む。竜巻の乱流に舞い上げられ、吹き飛んでいく変異体達。砂埃の様に軽々と。
 その後を追いかけて走るミミリとヒューケイン。やがて通用路が途切れ、広大な空間に踊り出た。空間の端と端は、スロープ状の連絡通路で繋がれている。通路の眼下に広がるのは艦載機発着用のデッキだった。
 竜巻に巻き込まれ、吹き飛ばされた変異体達がデッキに放り出され床面へと落ちて行く。
「やろうめ、手間掛けさせやがって!追いついたぞ、ミ(`)ン(`)チ(`)にしてやる!」
 悪態をつくヒューケイン。スロープの上を走る<ラース・カーフ>の姿がそこにあったからだ。
 だが、その進路を塞ぐように十数体程の変異体がスロープの上で待ち構えていた。
 ミミリは能力を行使して風を起こそうとしたが、
「あっ――ぐぅっ――…!」
 うめき声を上げて、その場にくずおれかけた。
 アイテール粒子から窒素を生成し続けたせいで、ミミリは体力を激しく消耗していた。もう、そよ風一つ起こす力さえ残っていない。竜巻を起こしたのは最後の一絞りだったのだ。
 それでも、ミミリは華奢な体を必死に奮い立たせ、走る――!
 能力は使えずとも、まだこの体がある。己の体と、その身に宿す力(技)を武器とすれば――
「ミミリ、大丈夫か!?」
「大丈夫です!まだ…行けます!」
 ――そう、戦える。
 最後の障害と化した変異体達が二人に襲いかかる。
 黒と躑躅色。二人のマジェスターは、手にした武器を構え、迎え打つ。いや、違う。
 制圧する――!!
 斬り伏せ、叩き斬り。時に身を入れ替え、回り、剣を振るう。踊るように剣を振るう。
 二人のジルバ(剣舞)に合わせて、飛び爆ぜて行く変異体。
 突き刺し、打ち下ろし、薙ぎ払い。二人は、息もピッタリに踊る。狭いスロープでダンスを
踊る。華麗に優雅に、剣のダンスを踊る。
 後に残るは、死屍累々。もとい、かつて変異体だった赤黒い液体と光の粒子。
 変異体の群れを掻き分けた先に<ラース・カーフ>の姿が見えた。
「「おあぁぁぁぁ―――ッ!!」」
 腹の底から気合いを発し、二人は疾駆、跳躍。赤黒い光を放つコアに剣を突き立て――
「「イグニッションッ!!」」
 バキリ…。と、コアに亀裂が走り。真珠色の体が灰褐色に染まり。ひび割れ。<ラース・カーフ>は赤黒い液体と化した。