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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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3.



 ヒューケインはミミリがここまで来た経緯を説明してくれた。
「あの『便利家電』こと、ツツジ・C・ロ―ドデンドロンに、ビリビリっと気絶させられたあと、高速艇に担ぎ込まれて、ここまで運ばれてきたんだぜ。覚えてないのか?」
 思い出した。
 あの時、喚いて散らしたあと、自分はツツジの電気ショックで気絶させられたのだ。そう考えると結構長い時間、気を失っていたのかもしれない。
 凛が、ミミリが座る隣のリクライニングチェアに腰を降ろして足を組んだ。
「高速艇には、私達も居合わせていたんだが、君はぐっすり寝ていたよ。それこそ泥のようにね」
「そうだったんですか。あの、道中何かトラブルとか…なかったですか?」
「いや、とくに目立ったことは無かったぞ。なにか、気にかかることでもあったのかな?」
「ああ…いえ。私、不運を招く…と言うよりは引き寄せてしまう体質なもので。私がいる所に限って、極稀な確率で発生するイレギュラ―が頻発するんです。時にそれが、人を…その…殺したことも…ありまして。それで、皆さんになにかご迷惑をかけてしまったのではないかと」
 それがミミリにとって一番気がかりな事だった。
 自分がいるだけで稀な異常が、異様な確率で発生する。自身のこの体質が、時に人を殺すことだってあり得るのだ。それに他人を巻き込んでしまってはとても居たたまれない。
「ミミリ君。それは自意識過剰というものだ」
「え?そ…そうでしょうか」
凛にキッパリと否定され、ミミリは目を白黒させた。
「そうだ。意識し過ぎているが故に、そう頻繁に起きているものだと君は錯覚し、強く思い込んでいる。例えそれが事実だとしても気負いすぎるのはよくないな。過度に自分を責め過ぎるのはもっとよくない」
 手に持ったコ―ラのスチ―ルボトルを近場のテ―ブルに置いて、ヒューケインが凛に続いた。
「お姉ちゃんの言うとおりだぜ、ミミリちゃん。運命って奴は、なるように成る。そう言う風に出来ているんだ。色んな人達が相互に関わり合い、事態が噛みあった結果、”そうなった”。それを誰か一人のせいにすることなんて出来やしない。
思いつめるのは心に毒だぜ。偏り過ぎないよう、”いい加減に”適度で適当が一番。
それが人生を楽しく過ごすコツさ」
 それを聞いて、凛はむっと顔をしかめ、ヒューケインに抗議した。
「お前は悪い意味で、”いい加減で”適当すぎるがな。
公人たるリミテッドテンとしての資質を疑う限りだ」
「おいおい。そりゃないぜ、お姉さま。これでも規範的な人間になろうと努力してるんだぜー」
 その気もないような調子で、ヘラヘラと言うヒューケイン。
「ふふ…。あははは」
 二人のやり取りに、ミミリは思わず笑い声を上げてしまった。
 突然の笑い声に、凛とヒューケインは目をぱちくりさせる。
 (うん…そう…なのかも、ね)
『気負いすぎて、自分を責めるな』『適度に適当』――。最もだな、と思った。
「お二人ともありがとうございます。そう言ってもらえると、助かります」
「いや、なぁに」
「よせよ、照れるぜ」
 ミミリは温かい気持ちになった。この二人は、自分を受け入れてくれたような気がしたからだ。
 凛が目線をあげ、ふと思い出したように言った。
「まぁ、そうだな。目立ったイレギュラ―といえば、そこのヤンキ―が、寝ている君の体にやらしい道具で悪さしようとしてたので、喝を入れてやった」
「ッんがふッ!?」
「ふぇ…ッ!?」
 それを聞いて、ミミリの全身に鳥肌が立った。
 ガーデン808でのこともあって、ミミリは少々、男性不信になっていた。
 それに、第二次性徴真っ只中の彼女にとって、男性が女性に抱く性的関心から来る感情 は嫌悪すべきもの。それを一言でいうなら、そう――シンプルに。
『気持ち悪い』。
「えぇっ!?道具って…ひぇぇ…やだぁ。えぇ…と、ヒュ…ヒューケインさんって、ロリ
コンなんですかぁ―?」
 警戒心を顕にして、気持ち悪そうに言うミミリの目尻には涙が浮かんでいた。
「違うって!つかなんでそう飛躍すんのッ!?ロリを匂わす要素がどこにあったよ!
つ―か凛、誤解を招くようなこと言うんじゃねぇ!!」
 ミミリは目の端に涙を浮かべ、リクライニングチェアの隅でガクガクと身を震わせる。
「ご…誤解?つまり、それに相当することをやったと言う事…ですよね?あわわわ…」
「…おいおい、ミミリちゃん。地味に後ずさらないでくれ、怖がらないでくれ、怯えない
でくれ。それに俺は断じてロリコンじゃない。その気はないから安心して欲しい。な?」
 真摯な態度で、宥めすかそうとするヒューケイン。
「ほ…ほんとうですか?」
 涙目になって、口をあわあわさせるミミリ。
「あぁ、ほんとうだ」
「じゃぁ、私の女としての体に興味があって…!あぅあぅ」
「ブフゥッ!?あのねぇ、ちげぇ―って…」
 帰ってきた斜め上の答えに、ヒューケインはげんなりと項垂れる。
 当人が否定をしようとも、ミミリの口上は止まらない。
「未成熟な女性に性的興奮を覚える殿方もいるってお母様も言っていました…(ガクブル)」
「だから、興味ねぇって言ってるだろ。俺の女性趣向は至って健全だ」
「え?ケモノ系とか、そっち方向に…ですか?やだぁ、難易度高過ぎる上に、マニアック
すぎですぅ」
『うわぁ』という顔をして、どん引きするミミリ。
「あさって方向過ぎるだろ!なんで、ケモラー(獣人好きな人のこと)扱いだよッ。
だから、俺はミミリちゃんぐらいの子にそんな気持ちは微塵も抱かないって言ってるんだ
よ!!」
「は…はぁ。じゃぁ、どういう女性が好きなんですか?」
 ミミリは、目端に浮いた涙をぬぐい、話を最初に戻す。
「そうだな―。例えて言うなら、凛のようなプロポ―ションの良い大人の女性が好みだな」
そういうヒューケインの顔は、僅かにニヤケていた。
(うぇぇ、やっぱり気持ち悪いかも…)
 次の瞬間。
 背後から、なにやら憎悪めいた負のオ―ラが立ち昇った。
「ヒューケイン、貴様…。遺伝子上の姉である私をそんな性的な目で見ていたのか」
 凛が全身から殺気を放っていた。ヒューケインはそれを見て、顔を青ざめさせる。
「いや…、その違うって誤解だよ。大人びた女性が好きだってことさ。も…もちろん、お
前も素敵だぜ、凛。…ハハハハ」
「そうか。そう言われて悪い気はしないが…。なんていうか気持ち悪い。寒気がする。
お前さ、死んでくれないか。お湯をかけてインスタントに三分で死んでくれよ」
「褒めたのにヒデェ!カップ麺かよ俺はッ」
 凛はそれでもなお、怒りと軽蔑の眼差しをヒューケインに向け、
「それと今後、私の半径30km以内に近づくなこのゴミめ。さもなくば『作業』する。貴様の△◯×を三枚におろして魚の餌にする的な意味でな」
「やめて!色んな意味で再起不能になっちゃうっ!ノーモア『作業』!!」
「おや?なんだ、最近のゴミはハイテクだな。人の言葉を喋るのか」
「ひでぇ…」
 凛に、罵倒を浴びせられたヒューケインは頭をワシワシと掻き、
「さんざんないいようだな、ホントー。そう言うなよ、凛。物の喩えだって―」
「ほぉ?どういう例えだ?比喩を用いて言ってみてくれ」