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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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 シャトル爆弾テロ事件で知り合った、愚痴吐きの連邦捜査官、バ―ジル・マクレイン。
 コロニ―<ハナキリン>で、仕事が見つからず、行き倒れそうになった自分に、宿と仕事を紹介してくれたオハナさん。それに行く先々のコロニ―で知り合った人達。
 色んな人達が関わり合い、支えあって生きている。それが社会。
 自分もそうした人間社会に生きる一員なのだ。
 自分を生かしてくれた世界と社会に恩を返す為にも、生き続けなくてはならない。

「ツツジはなんで、私みたいな面倒な人間の為にここまでしてくれるんですか?」
 ミミリはわかっていて、わざと訊いてみた。
「べっ別に…そんなんじゃないわよ。まぁ―、そうね。しゅ…趣味みたいなものよ」
 口を尖らせて強気に言うツツジだったが、本当のことを言うのが恥ずかしくて、照れ隠しをしているのがバレバレである。
「ふふふ」
「なっ…なにがおかしいのよぅッ!?」
 やはり、ツツジはあんな風に突き放しても、それで怒って自分を放って帰るような薄情な子ではないのだ。
 ツツジは、自分が両親を亡くしたあの日から失った平穏と日常を、取り戻して欲しいと切に願ってくれていたのだ。今の今まで、彼女は自分の身を慮って気遣ってくれたし、とても献身的に接してくれた。甘えが過ぎれば、時には突き放すような厳しさを以て接して来ることもあった。
 ツツジ・C・ロ―ドデンドロンは、安っぽい善意で他人を憐れんだり同情するような子ではない。他者に厳しく、自分には特に厳しい子だ。それでいて、自分の身を省みず、自身を犠牲にして他者のために身を投げうつ。いい加減な気持ちで他者に立ち入ることはしない。やるからにはとことん本気で接する。
 そういう高尚な心の持ち主なのだ。
 そんなツツジに、あんな見え透いた手が元より通用するワケがない。
「でも、私の不運は天災レベルなんですよ?私なんかがいたら…」
「問題ないわ。私が超絶な天運と幸運に恵まれてるのは知っているでしょ?生まれてこの方、不幸なんて露知らず。何をやっても上手く行ったし、普通ながらもアンタとは、対称の人生を送ってきた。アンタが尽く起こすトラブルに巻き込まれて来たけど、私はカスリ傷一つ負ったことはなかったわ。五年前のあの時だってね。私に任せてよ。アンタが受ける不運なんて、私がぶっ飛ばしてあげる。そんな性悪の不運なんて、私の特大の幸運でプラマイゼロにしてやる。
そうすりゃ、”世は事も無し、無事平穏”。めでたし、めでたしよ。
だから、つべこべ言わず、大人しくついて来なさいッ!」
 真っ直ぐな目で『私に全て任せなさい』と言うツツジの思い遣りが、ミミリには嬉しくもあり、却って辛すぎた。
 厄介事を身に引き寄せる自分の為に、そこまで身を挺する必要なんてないのに。
 ツツジの気持ちはとても嬉しく思う。彼女の信条は理解している。その気持ちは受け入れるべきだ。そうすれば自己犠牲を尊ぶ彼女は、喜んで自分の心に殉じることだろう。
 それなら私は、それを――…

   ――シャトルが爆発する瞬間。
        死の光景がフラッシュバックした――
 私の不幸は私を殺さないが、私以外の者には容赦なく牙を剥く。
いつそれが、ツツジの幸運のバリアを突き破って、彼女を殺すとも限らない。

 それが、怖い。
 たまらなく、怖い。

     ――だから。
だから やっぱり。

「…だ…」
「え?」
「やぁ――――、だぁぁ――――ッ!無理!”絶対無理”ですよ!
私の不運(ハ―ドラック)は、そういうレベルの物じゃないの!
運命とか因果レベルで作用するものなの――――。
そういう宿星(もの)なんだからッ!
どんなに抗っても、なる時は”絶対”そうなるんだから。
ツツジがいくら幸運に恵まれてても、無理っ!
”ぜぇ―――――たいっ”、ムリッッ!!
だから、やだ。”絶対”、一緒にはか・え・ら・な・い―――――!」
 ミミリは、あらん限りの声で喚いて散らした。
 まるで、聞き分けのない駄々をこねる子供のように。
「こ…こんの…」
 それを聞いて、ツツジの中で何かがバチンと切れた。(厳密には、言葉の中にある一つのワ―ドを聞いて、だが)俗に言う、堪忍袋の尾という奴がブッツリと。
 ツツジの掌から、電光が迸る。
「…だぁぁ、もうっ!この分からず屋ぁぁああぁぁ――――――ッ!!」
「あびゃびゃらびゃvぶらhl#$%¥ぁbryくwbらSfじkぇ――――――ッ!?」
ツツジは『能力』を行使し、掌から高圧電流を発生させ、ミミリの体を掴んで流し込んだ。
 これぞ、人力スタンガン――もとい、必殺ツツジ・コレダ―。
 体中を駆け巡る六十万ボルト超の電流に、全身の神経と筋肉が痺れ、痛みに鞭打つ中で、ミミリは朦朧となり気を失った。
 
 ツツジは、気を失いぐったりとしたミミリを背に担いだ。
 その顔に、怒りと悲哀を混ぜ合わせた表情を浮べ――
「…”絶対ムリ”とか、言うんじゃないわよバカ…。”絶対”なんてことは、”絶対”ないんだから…」