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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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 どこをどう取ればそんな解釈出来るんだか。狙ってやってるんじゃないのったくほんと…ブツブツ…。と、ツツジはブチブチとボヤいてから、「んんッ」と咳払いをした。
「しかし、あの時は爆発はともかく、酸欠で死ぬかと思ったわ。ん…まぁ―、アンタが反
射的に空気の膜で覆ってくれたから、そのお蔭で助かったけどね。それには、まぁ―その
…感謝しとくわ」
 居丈高に上から目線で言うツツジだったが、ほんのりと顔が赤らんでいた。素直に礼を言えばいいのに、強がっているのは本人なりの照れ隠しなのだろう。
「いやぁ、そんな。もとは私が悪いんだし、当然のことだよー」
「ううん。まぁー、ありがとうね」
 あははと笑う二人。
 ミミリがふと思い出したように口を開き。
「でー、あの後、どうなったんだっけ?」
「んん?…なんですって…?」
 ツツジはそれを聞いて、笑顔で顔をしかめた。どんどん顔色が不機嫌の色に曇っていく。
 その原因は、ミミリがつい”蒸し返す”ことを口走ったからだ。
「ハァ!?それマジでいってんの。ったくアンタ、本当に都合のいい頭の作りしてるわよね。あの時は私の不注意が招いた事故ってことで、アンタを庇って私が両親に説教くらったんでしょうが。全く大いに、感謝してほしいわよね」
「あ―…、あぁ。うん、そうだったね―。あの時はありがとう、ツツじー」
「い―え、どういたしまして。はぁ…。もうイヤだぁ、この子…」
 ツツジはげんなりして言った。

 ミミリは素直ではあるのだが、お嬢様育ちと生来の天然さが加わって、変な所でズレている。 世間の常識と物事のセオリ―が今ひとつ理解出来ていないのだ。
 そのくせ、上流階級の礼儀作法やマナ―。何故か科学やビジネス・経済と言った堅苦しくて専門的なことには強い。

 そのチグハグさが、普通の常識人であるツツジには理解に耐えず、たまらなく無性にイラつくのであった。あと、若干人の心の機微に鈍感な所もだ。
「…あぁ、もうっ!なんか思い出しただけでムカついてきたわ。なんで、私がアンタを庇って説教されなきゃなんないのよ。もとの元凶はアンタだってのに…。ねぇッ!?」
 ツツジの形相は、それはギロリと音が聞こえてきそうな程、凄まじいものだった。
「ひぇっ…!や…ハイ!ホントウニ、モウシワケアリマセンデシタ――!?」
 ツツジの激しい剣幕に圧倒されて、ミミリはつい反射的に謝ってしまった。
「アンタのその鈍さと空気の読めなさにはホント呆れたわッ!!その年になって物の善し悪しがこんなにも判らないなんて。アンタ今まで教育施設の集団生活で何を学んできたのよぅっ、あぁん!虐められてたのも、アンタのその性格のせいじゃないの!?」
「ひゃい、スイマセンッ!空気読めない子でホントスイマセンッ」
「わかってんじゃないのよ!むがぁ――っ、そこになおれぇッ。ス―パ―お説教タイムよ――!」
「ひゃいぃぃぃ―――ッ」
 その後、小五分ほどツツジは、説教混じりにありったけの文句と罵詈雑言をミミリにぶつけてから、「ほんと、ざっけんじゃないわよ」と悪態を付いて締めた。
 喋り続けで疲れたのだろうか。ツツジは肩でぜいぜいと息をしている。
「え―と、その…。ツツジ?」
 ミミリはどんな風に声を掛けたものかと悩んでいると、ツツジがひしりと抱きついてきた。
「えぐ…うぐ…」
 嗚咽が混じったような息遣いの声がミミリの鼓膜を揺らした。
「…本当に、怒ってるんだから。こんなに、心配かけさせて…。でも…やっと会えた。良かった、良かったよぅ…本当に無事で」
そう言って、ツツジはミミリの胸に顔をうずめて、ぐしぐしと咽び泣いた。
 ミミリはそんなツツジを優しく抱き寄せて、憂い気に微笑んだ。
「ほんと、ごめんねツツジ、心配かけて。もう、どこにもいかない。ちゃんと、ツツジのいう事聞くね。約束する」
 抱き合った二人の体が宇宙にゆっくり。くるり、くるりと回りだした。
 まるでこの広い世界に二人しかいないような。そんな時間が広がった。
「当然でしょ、バカ。約束だからね。破ったらレ―ルガンで撃ち飛ばして宇宙の星にしてやるんだから。無くなったポルックスの代わりにしてやる。双子星の片割れも大喜びよ、きっと」
 泣きはらした顔に、ツツジはいたずらっぽい笑みを浮かべて見せた。
 それを聞いたミミリは、ぷぅと頬をふくらませて。
「やだよ―。そしたらツツジ、また怒ります」
「ったく、あったりまえでしょ」
 そう言って、二人はたまらず噴き出して、笑い声を上げてしまった。
「…ところで、どうやって私を探し当てたの?」
 ミミリとしてもこればかりは気になる不思議なことで、是非聞いておきたいことだった。
「レゾンリンク。同一遺伝子を持つ個体間の共感覚よ。『マジェスターは、先天的に自身と同一の遺伝子を持つ同位体の存在を潜在意識下で知覚することができる。双子が備える共感覚に類似した存在知覚能力』座学の授業で習ったはずよ。アンタと私はどういう間柄?遺伝子上の姉妹じゃない。ここまでプランタリアの近くに来ていれば、さすがに感知圏内よ。
といっても、光速で飛ばしてもまだ1.5秒はかかる距離があるけどね」
 先ほど感じた温かさ。あれはレゾンリンクに因るものだったのだ。
 それにしても何故、今の今まで先天的に使えるはずの能力が使えなかったのだろうか?
 今までは、お互いの存在を近くに感じていたせいでレゾンリンクを使う必要がなかったというのもある。
 教育施設にいた頃も、ツツジとはメールフォンでやり取りをしていて、遠くの土地に居ながらも互いの存在を認識していた。それが却って、発露の妨げになっていたのかもしれない。
 互いの存在を認識できないほど離れ離れになって、ようやく発露開眼することが出来たのだろう。
「でも凄いね。普通、なんとなく判るだけで、ここまで正確に位置を当てられるものじゃないんでしょ?」
「まぁね、そこは流石の私。一工夫したという訳よ。大まかな当たりをつけてから、センサーを数十キロの間隔で配置してさ。下準備をしてから自前の能力でセンサ―を遠隔操作して、徐々に探索範囲を狭めて位置を絞り込んでいったのよ。それでも、見つけ出すのに三週間かかってしまったけどね」
「おお―、さすがはツツじ―。電子を操る力で、防犯センサ―から湯沸しまで一人でこなすだけはあるよね―。一家に一人は欲しい万能家電少女、文句なしの年間ベストセラー第一位だよ―」
「人を、使い勝手のいい便利な家電製品みたいに言うなッ!」
「ひゃぅんッ!」
 ツツジに額をチョップで叩かれて、踏まれた犬のような声を上げるミミリ。
「さて、いつまでもアホな漫才やってる訳にも行かないし、帰るわよプランタリアに。向こうに、高速艇を待たせてあるんだから。ほら、いこ」
「え?」
 そう言って、ツツジはミミリの手を取り引っ張った。
 
 ミミリの約一年に渡った、長い宇宙放浪生活も、これでようやく終止符が打たれる。
 プランタリアでは、叔父ユリウスが帰りを待ちわびているはずだ。
 叔父に話したいことはたくさんあった。この旅で体験した色々なこと。
 一年間の授業の遅れも取り戻さなければならない。
 それは、大人たちが片付けてくれる問題だろう。