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看護師の不思議な体験談 其の十二

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「うわ、怖。」
 思わずつぶやいたが、暗い表情のKさんがかわいそうで、背中をぽんぽんと軽く叩いた。
「よしよし。きっと夢だったって。」
 小さくため息をつくKさん。
「はあ。というわけで、今日は、真面目に働きます。」
「うんうん。…って、いつも真面目に働けよ!」
 なんて、軽いのり突っ込みをしつつ。
 だって、冗談でも言って過ごさなきゃ、怖いじゃないの。

「杉川さん、もう一個怖いと思うことがあって…。」
「ええっ、まだあるの?もういいいよ…。」
 Kさんが、うーんと首をひねっている。
「いや、そのさっきの人形の話ですけど。明らかに日本人の顔なのに『メアリーちゃん』て。…なんすか、外人に憧れるお年頃っすか。」
 先輩Nさんと一緒に、吹き出して笑ってしまった。
「分からんよ。帰化したとか、養子とか、難しい背景が隠されとるんかもしれんし。」
「ああ、なるほど。」
「Kさん、本当は怖がってないでしょ。うちは、話を聞いただけでも鳥肌ものなのに。」
 私の話を聞いてるのか聞いてないのか、もう一度枕を抱えて歩き始めた。
「ちょ、Kさん?」
「え、だって、私30分しか休憩とれてないんで。あ、ていうかちっとも休んでない。」
 そう言うと、Kさんはスタスタ歩き始め、もう一度ソファーに横になった。
(え、本気で??)
 そっと見ると、さすがに電気はつけているがソファーですでにうとうとしているKさん。
(ソファーはゆずれないのか…。)

 何が怖いって、そんな怖い思いしながらも同じ場所で寝ることのできる後輩ですよね。