炉黒一琉の邂逅(2)
辺りは宵闇に包まれていた。
闇が辺りを支配し、光が固く閉ざされている世界の様だ。周りの不気味で気味の悪い雰囲気がそうさせるのか、この季節にしては少し肌寒く感じた。
そして、僕たちはその闇の中を数少ない懐中電灯の光を頼りに歩いていた。
整備が行き届いていない、少しばかり荒れた道を歩き始めて約一時間。さすがに僕の足も疲労を訴え始めていた。
歩いている道も人っ子一人としていやしない。
それもそのはずだろう。時刻にして丑の刻。真夜中の二時を指しているのだ。誰が好き好んで、街灯の一つも用意されていない不気味な道を歩くというのだろうか。そして何よりも、禁足地である藪地蔵の森の近くを。
「諸君、我々は神隠しに会うのだ」
一同が沈黙する中、少し鼻のかかった声が辺りに響いた。
「そうだというのに暗いぞ、皆・・・・・・痛っ」
その第二声と共に、バタッと何かが倒れた音が聞こえて来た。
どうやら、声の主が盛大に転んでしまったらしい。
「蛹裏、大丈夫?」
僕は、その盛大に転んだ主、自称魔女こと電波女の蛹裏レイに声をかけた。というよりも、僕の隣で盛大に転んでしまった為に反射的に声をかけたと言うべきだろうか。
「・・・・・・痛い・・・・・・くない。だから大丈夫」
その言葉とは裏腹に、その声は少し涙声が入り混じっていた。どうにも辺りが暗いという条件も重なり、受け身を取れずに転んでしまったらしい。
その証拠に、蛹裏の瞳には涙が溜まっていた。
「これはあれだぞ・・・・・・あれだ!」
「・・・・・・なんだよ」
「魔女の涙は聖水なんだ。涙なんかじゃない!」
「涙って言ってるじゃん」
「うるさいぞ、炉黒君。レディーに執拗なまでに問いただすなんて言語道断だ」
「・・・・・・はいはい」
懐中電灯で照らされた蛹裏は、懐中電灯で照らされ、その澄んだ金色の髪の毛が辺りの闇を照らしているようだった。暗めのスカイブルーの瞳を有す目は眩しさから少し細められ、表情が崩れてはいるが、そこからも十分に整った顔立ちだと言うのが分かる。
肌は、生まれてこの方太陽の光を浴びてないんじゃないかと思わせるほどに白い。けれど、それが病的な白さではないのだ。白人特有の白さと言えばいいのだろうか。触ったら溶けてしまう雪の様な・・・・・・それでいて人間味の白さがあるのだ。
身長は百五十センチ強と小柄である。
蛹理は、イギリス人とのハーフらしいが、どうにも母方のイギリスの血が強く遺伝しているらしい。
「眩しいぞ、炉黒君」
「あぁ・・・・・・ごめん」
僕は、蛹理を目標に照らしていた懐中電灯を自分の足元へと移した。
「それはそうと、蛹裏。よくもまぁ、好き好んで藪地蔵の森に来ようと思ったな」
「私は魔女の末裔だからね。オカルト的な事には興味深々なんだ」
夜目の効いた僕の目には、喜色満面な蛹理の表情が見て取れた。まるで遠足に向かう前日の子供の様だ。
「おかげで遠足に行く前日の子供の様に気持ちが弾んでいるよ、炉黒君。ウキウキだ」
・・・・・・僕の比喩は適切だったらしい。
闇が辺りを支配し、光が固く閉ざされている世界の様だ。周りの不気味で気味の悪い雰囲気がそうさせるのか、この季節にしては少し肌寒く感じた。
そして、僕たちはその闇の中を数少ない懐中電灯の光を頼りに歩いていた。
整備が行き届いていない、少しばかり荒れた道を歩き始めて約一時間。さすがに僕の足も疲労を訴え始めていた。
歩いている道も人っ子一人としていやしない。
それもそのはずだろう。時刻にして丑の刻。真夜中の二時を指しているのだ。誰が好き好んで、街灯の一つも用意されていない不気味な道を歩くというのだろうか。そして何よりも、禁足地である藪地蔵の森の近くを。
「諸君、我々は神隠しに会うのだ」
一同が沈黙する中、少し鼻のかかった声が辺りに響いた。
「そうだというのに暗いぞ、皆・・・・・・痛っ」
その第二声と共に、バタッと何かが倒れた音が聞こえて来た。
どうやら、声の主が盛大に転んでしまったらしい。
「蛹裏、大丈夫?」
僕は、その盛大に転んだ主、自称魔女こと電波女の蛹裏レイに声をかけた。というよりも、僕の隣で盛大に転んでしまった為に反射的に声をかけたと言うべきだろうか。
「・・・・・・痛い・・・・・・くない。だから大丈夫」
その言葉とは裏腹に、その声は少し涙声が入り混じっていた。どうにも辺りが暗いという条件も重なり、受け身を取れずに転んでしまったらしい。
その証拠に、蛹裏の瞳には涙が溜まっていた。
「これはあれだぞ・・・・・・あれだ!」
「・・・・・・なんだよ」
「魔女の涙は聖水なんだ。涙なんかじゃない!」
「涙って言ってるじゃん」
「うるさいぞ、炉黒君。レディーに執拗なまでに問いただすなんて言語道断だ」
「・・・・・・はいはい」
懐中電灯で照らされた蛹裏は、懐中電灯で照らされ、その澄んだ金色の髪の毛が辺りの闇を照らしているようだった。暗めのスカイブルーの瞳を有す目は眩しさから少し細められ、表情が崩れてはいるが、そこからも十分に整った顔立ちだと言うのが分かる。
肌は、生まれてこの方太陽の光を浴びてないんじゃないかと思わせるほどに白い。けれど、それが病的な白さではないのだ。白人特有の白さと言えばいいのだろうか。触ったら溶けてしまう雪の様な・・・・・・それでいて人間味の白さがあるのだ。
身長は百五十センチ強と小柄である。
蛹理は、イギリス人とのハーフらしいが、どうにも母方のイギリスの血が強く遺伝しているらしい。
「眩しいぞ、炉黒君」
「あぁ・・・・・・ごめん」
僕は、蛹理を目標に照らしていた懐中電灯を自分の足元へと移した。
「それはそうと、蛹裏。よくもまぁ、好き好んで藪地蔵の森に来ようと思ったな」
「私は魔女の末裔だからね。オカルト的な事には興味深々なんだ」
夜目の効いた僕の目には、喜色満面な蛹理の表情が見て取れた。まるで遠足に向かう前日の子供の様だ。
「おかげで遠足に行く前日の子供の様に気持ちが弾んでいるよ、炉黒君。ウキウキだ」
・・・・・・僕の比喩は適切だったらしい。
作品名:炉黒一琉の邂逅(2) 作家名:たし