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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(1~5節まで)

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アクトゥスゥ変異体は、元となった物がなんなのか判らないほど、
理解不能な形状をしていた。有機的な部位もあれば、機械的で無機質な
部位も持つ、有機と無機の混合体。
 一言で言えばそう――”グロテスク”。
ただしその外観は、能面のように無垢でまっさらな質感があり、
加えて思慮の読めない得体のしれなさがあった。
それがより一層の不気味を感じさせた。

 深冬は静かに大きく息を吸い――吐いた。
「EVB-ウェポンを展開します。エリカ、弾頭(ガラスの剣)の仕上がりは?」
「スキャン開始から30セコンド。<精錬>終りましたわ。データ転送します」
「受領完了。カートリッジ形成、装填」
 深冬の背後に、六枚のヘックスを繋ぎあわた扇状の
構造体が左右に現出した。
――物質には固有振動数が設定されている。それと同じ
周波数の音をぶつけてやると分子が共鳴現象を起こし物質は
結合崩壊を起こす。それに近い理屈と原理を用いて、対象を
分子レベルに解体し、原子核を破壊。
素粒子レベルにまで還元して消滅させる――
 それが、対アクトゥスゥ変異体撃滅の為に用立てられた、
EVB-ウェポン<共振消滅破砕兵器>と呼ばれる代物だった。
 アクトゥスゥに憑依・侵食汚染された物質は、この宇宙には
存在しない全く未知の『モノ』に組成変化を遂げる。
 時に炭素結晶体(ダイヤモンド)以上の硬度を有したり、
あるいは熱核兵器の直撃を受けても蒸発せず、残った体の一部から
直ぐ様体組織を復元する再生能力を持つようにもなる。
そうした特性を持つアクトゥスゥ変異体を倒すに当たって、
EVB-ウェポンの使用は最もインスタントかつ、シンプルでベストな方法だった。

 ヘックスはそれぞれ花の花弁のようにスライドして展開し、
形の全容を顕にした。
その形は、花開いた蓮を連想させる。
 「スタンバイ…リリース。イグニッション」
 花の中心に備えられたスピーカー状の発射口から、
光の線――正しくは線状の『波』が構造体と共に発射された。
光線波は、宇宙の暗闇を引き裂いて突き進んだ。
 光が直進する運動エネルギーによって電気分解された宇宙空間の
塵がイオンと化し、通った跡をスパークが弾けてなぞった。

 光が発射されてから、1.56秒後。
はるか遠方の宇宙の空で、光芒が煌いて瞬くのが二人の目に映った。