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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(1~5節まで)

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喧嘩の切っ掛けを作ったジェイミーやジェニーも同じく。
 説教が終わった後、二人は釈然としない顔で文句を垂れていた。
が、ミミリは一切不平を漏らすことはなく、自身の行いを恥じ、
甘んじて叱責を受け入れた。 

 それ以降、ミミリに表立って突っかかって行こうとする者は
いなくなった。喧嘩を売るには高くつく相手だと、周囲に認知される
ようになったのだ。
 気弱だったミミリは、それを堺に生まれ変わった。
教官達のセクハラやパワハラも毅然とした態度で払いのけられるように
なった。
 意地悪だったジェニーやジェイミーも、あの一件で少しは懲りたのか、
ミミリに畏怖を感じているのか、だいぶ柔和な態度で接してくる様に
なった。同年代の友達もいくらか出来た。
 彼女はとうとう、誰の手も借りず自分の手で、
他者に脅かされない立場と権利を掴み取ったのだ。

 その月に来た叔父からの手紙には、今まで延ばし延ばしにしていた
養子縁組の答えを聞かせて欲しいと書いてあった。
ミミリの答えは既に決まっていた。

 教育施設を卒業し、プランタリアへと渡る運命のその日。
『タンポポ叔父さん』が迎えに来た。 
 その日、ガーデン808の校内駐車場には、白い車が停まっていた。
ひと目で見て、そうおいそれとは庶民が手に出来ない高級車と言う風情の車が。
 普段、子供たちの前では支配者を気取り、威圧的な態度を
取っていた教官達が、その日に限って、掌を返した様に
ヘコヘコしていたのを覚えている。
 ミミリを疎んじていた生徒達も、目を丸くして驚いていた。

 「さぁ、行こうか。ミミリ」
 「はい。叔父様」
 吹き抜け状になっている寮舎のエントランスホールを、
純白のドレスを身に纏い厳かに歩くミミリと、同じく白いスーツを着こなし
彼女の手を引くユリウスの姿があった。
 どこからか、嘆息の声や、賞賛の声が聞こえた。
皆、二人の姿に釘つけだった。

 『タンポポ叔父さん』こと、ユリウス・ダンデライオンの正体。
彼はなんと、プランタリアの学園長だった。
 プランタリアは連邦政府安全保障省管轄の学園都市コロニー。
そこの学園長ともなれば、連邦政府の長官職と同等の
権限を持つ国家の重役という訳だ。
 ユリウスは、学園長就任以前は連邦政府軍の兵器受注を
一手に担うアイテックス(I-tex)・インダストリーグループの
代表取締役兼会長を務めた経済界の貴公子だった。

 マジェスター教育士官学校プランタリアへの入学を機に、
ミミリは学園長である叔父ユリウスの養子となった。
 四年間の苦難の日々を乗り越えたミミリは、
ようやく平穏な日常をその手に取り戻したのだ。


 ――かのように思えた。
 『不幸と不運を引き寄せる』体質のミミリの平穏な日々は
当然そう長くは続かなかった。