この手にぬくもりを
慌てて言い繕おうとすると、板垣が起きあがって彼女の肩を叩いた。
「いや、いいんだ。僕もうまく言えなくて……なんていうのかな、喜久子にはいつも苦労をかけて……君たちのことを一番に考えているなんて、言えたものじゃないが」
喜久子は夫の真意が分からず、不安になって板垣の手を握った。
「君たちのためでもあるんだ。だから、これから何があっても」
「信じます」
喜久子は、ゆっくりと板垣にもたれかかった。彼の言いたいこと、今、自分に求めている事が分かった気がした。それはいつも、喜久子が望んでいたことに似ていた。
「大丈夫、私は信じますから。何があっても、私はずっと信じていますから」
何があっても、なんて、何があるというのだ。喜久子は、夫の冷たい手を握りしめた。