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裂け谷にて

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ロヒア「でしょう、処理するには何日もかかってしまいますよ」
エル「ああ、それでも根気(こんき)よく処理せねば。それで矢じりはどこに?」
ロヒア「右肩の所です」
エル「これか・・・これは褐色人(かっしょくじん)が使うものだ。前にも言ったが、獲物(えもの)を仕留(しと)めたなら敬意(けいい)を持って扱い(あつか)どの部分もきちんと利用しなければならない。狩の聖なる掟(おきて)に従えば、傷をおわせたならどこまでも追っていって止めを刺さなくてはいけないのだ。それなのに残酷(ざんこく)で邪悪(じゃあく)な何者かによって、苦痛の中にほおっておかれたせいで正気(しょうき)を失い、目の前にいる者が誰であろうと襲(おそ)いかかってきたのだ。二人ともよく仕留めてくれた。ようやくこの猪も心安らかに眠れるだろう。さあ、始めようか。まず、この猪の様にとんでもなく大きいときは、血抜きを先にした方がいい血も大量にあるからね。地面にこぼすわけにはいかない。後ろ足をしっかりとロープを結んで、木にひっかける。つるすと木が折れる場合があるから斜めに立てかける。そして、頭の下に岩を置いて頭を浮かせる。次に首にロープを巻きつけてきつくしばる。これは、頭の血だけを抜くために上の血が下がってこないようにするためにするんだ。そして、浮かせた頭の下に樽(たる)を置いて切る」
エルロンドは猪の頭(とう)頂部(ちょうぶ)を深く切った。血が滝のように出てきた。
エル「この間に胸の下にも樽(たる)を置いて切る」
首の付け根に近い部分を切った。

30分後

ようやく血抜きが終わった。
エル「よし。では解体を始めよう。レゴラス、大丈夫か?」
レ「はい、大丈夫です」
エル「手順は鹿と同じだ。お腹を開いて、肝臓を切り取って細かく切って乾燥させる。エルロヒアやってごらん、エルラダンは見ていなさい」
ロヒア・ラダン「はい」
エルロヒアが横たわる大きな猪(いのしし)の腹の前に来た。
エル「これを使いなさい。いつもの短剣じゃあ時間がかかるから」
エルロンドはナタのような刃物を渡した。
エルロヒアが胸から肛門にかけて切っていく。
エル「上の皮を上げて止めておけば内蔵を取り出しやすくなるよ」
ロヒア「いつもの千本(針の様な物)では、むりですね」
エル「ああ、皮が厚くて無理だね。クナイ(忍者の武器)を使うといい」
エルロヒアは肝臓(かんぞう)を取り出した。
ラダン「大きいなぁ。一つ一つの部位が自分とかわらないや」
エル「重たいから気をつけて」
平たい岩の上に置き、エルロンドが剣でまっぷたつに切った。
エル「半分やるよ、このくらいの大きさに切って」
30分かかって、やっと切り終えた。
エル「次は毛皮を肉からはぐ。大きいから・・・このくらいに切っていこう」
エルロンドは素早く毛皮をはいでいく。エルロヒアは、まだ手際(てぎわ)があまりよくない
エル「スピードよりも確実さを重視しなさい。スピードは後から自然についてくるから」
ロヒア「はい」
エルラダンも真剣に見ている。
エル「次はオークの樹皮(じゅひ)を混ぜた水につけておく。」
15分位つけて干した。
エル「こうやって毛をこすりとる。頭蓋骨(ずがいこつ)をノミで開いて脳を少し切り出しつぶす。これで毛をこすって皮を柔らかくする。もう一度水につけて乾かす。その間に次は肉だ。ひづめから膝までを切って、これは、おおかみや鷲(わし)にあげる。足の付け根に切り込みを入れて折る。後ろ足をやってごらん、力がいるよ」
ロヒア「はい。・・・うわ、重い」
エルロンドが手をかして
エル「右に折(お)るよ。せーの」
”ボキ“と音をたてて折れた。足4本をすべて折(お)った。
エル「骨から肉を切り取る。これぐらいにして切っていって」
ロヒア「はい」
エル「肋骨(ろっこつ)の肉は背骨から骨にそって切っていく、肋骨2本分くらいかな、ここの肉は薄いからこうやって丸める。やってごらん」
ロヒア「・・・これくらいですか?」
エル「ああ、そんなもんでいいよ」
全ての肉を切り出すのに1時間以上かかった。切った肉は大勢のエルフ達が食糧庫に運んでいく。
エル「さあ次は、内臓だ。胃はほんらい水筒(すいとう)にするがこれは大きすぎるから携帯食(けいたいしょく)にしよう、これくらいに切って干そう。腸は、これくらいの長さに切っていく。そして肺は狼達の取り分だ。骨は砕いてまけば植物の肥料になるし薬にもなる」
そう言って作業にとりかかる。1時間かかってようやく処理を終えた。
エル「ふう、やっと終わったな。当分、猪の肉が食卓にならぶぞ」
ロヒア「食べる気があまりしないけれど」
エル「おいしく食べてやるのも彼に対する敬意(けいい)の一つさ」
ラダン「大量の血はどうするのですか?」
エル「薬にしたり、草木にかけたりするよ。猪の血はきれいだから、いろんな所に使える。レゴラスどうだった?」
レ「私の国でもしているのでしょうか?」
エル「いいや、君の国ではここまで徹底(てってい)してないよ。これは、裂け谷独自のルールさ。君の国では、あまり必要ないだろう」
レ「どうしてですか?」
エル「ここは国じゃない、住んでいる者もいるが、宿のようなものだ。長いこと留(とど)まる者もいるが、2~3日で出て行く者もいる。日々人数が変動している。君の国では、それぞれ役割があるだろ、兵士や馬の世話をする者とか、それに食糧もドワーフから買っているだろ。しかし裂け谷では、自給自足。食糧を取ってくる役割の人がいるわけではない。ここにいる者すべてが戦士であり、狩人(かりうど)であり、職人(しょくにん)なんだ。」
作品名:裂け谷にて 作家名:棚橋