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裂け谷にて

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裂け谷

エルロンド(エル)
エルロヒア(ロヒア)
エルラダン(ラダン)
グロールフィンデル(グ)
レゴラス(レ)

レ「え!」
レゴラスが初めて何かにショックを受けた日。それは大好きなエルロンドの事だった。エルフの歴史を学んでいたときのことだった。エルロンドが自分よりも幼いときに両親と離ればなれになり、拉致(らち)され弟をかばい一人拷問(ごうもん)を受け右の肋骨を折り取られたことを知ってしまったのだ。
レ「じゃあ、エルロンド様は今でも・・・」
グ「今でも時折(ときおり)痛みにさいなまれておられる。しかしエルロンド様はお強いから心配はいらないよ」
レ「本当?でもエルロンド様はそんなひどい拷問を受けたのに、なぜオークになりさがらなかったのでしょうか」
グ「それは、わたしにもわからない」
そのとき
エル「知りたい?」
グ・レ「エルロンド様!!」
部屋の入り口に立っていた。エルロンドは入口の柱に寄りかかりもう一度尋(たず)ねた。
エル「知りたいか?私がオークになりさがらなかったわけ」
レ「知りたいです」
グロールフィンデルも頷いた。
エル「弟がいたからさ。私は“弟に手を出すな、私が弟の分も受けるから”と奴らに言った。私が自分で撰んだ事、わけも分からずに恐怖の中で拷問されたのではない。守るべき者が側にいるのに、オークなんかになるわけにはいかなかった。まぁ見栄だ。その心が自分を保させてくれたのさ」
グ「そうなんですか。恐れ入りました」
何も言えないでいるレゴラスに向って言った。
エル「レゴラス、覚えておきなさい。大切なものを守りたいと想うとき人は本当に強くなれるものなんだよ」
レ「はい、エルロンド様」
エルロンドは満足そうに頷いて微笑んだ。
エル「勉強はもうおしまいか?」
グ「いいえ、もう少しやります。きりが悪いのでね」
エル「そうか、では終わったら私の部屋に連れて来て、おやつを用意しているからね」
グ「はい。では早く終わらせてしまいましょうレゴラス」
レ「はい。おやつが待ってますからね」
この言葉にエルロンドとグロールフィンデルは、笑い合った
エル「では、失礼」
そう言ってでていった。
グ「さあ続きだ」
グロールフィンデルはエルロンドの両親のこと、エルロンドと弟のエルロスの選択のことを話した。
レ「どうしてエルロンド様の弟様は人間を選んだんでしょうね?」
グ「それはね、エルロンド様がおっしゃっていたけど、父上(人間)と母上(エルフ)のどちらかにかたよってしまうと、片方の親とその種族に申し訳ない気がしたからだそうだ。
本当はエルロンド様が人間になるおつもりだったんだけど、エルロス様が“兄上が自分をかばって助けてくれたから、今度は自分の番だ”と言って人間を選ばれたんだ」
レ「エルロンド様は本当に弟思いなんですね」
グ「ああ、そうだね」
それから、ギルガラドのことサウロンのこと指輪のこと戦争のことを話した。
グ「なぜ君のお父様が君をエルロンド様の元にあずけたかというとね、この裂け谷が中つ国で一番安全な所だからだ。なぜ安全と言えるかというとね、ここにサウロンを倒した者がいるからなんだ」
レ「えっ!誰ですか?」
グ「それはね、エルロンド様だ」
レ「エルロンド様が!
グ「そうあの御方(おかた)が倒したのです。ギルガラドが倒されて、エルロンド様の前にサウロンが立ちふさがった。エルロンド様はサウロンと対等に戦った。ありったけの力を込めて剣を振り下ろし、その衝撃(しょうげき)でサウロンは体をのけぞらした。そのすきをついてサウロンの手から指輪を切り落とした。しかし、それと同時にサウロンの剣がエルロンド様の腹を貫いてしまった」
レ「エルロンド様は、大きな傷をいくつもおもちなんですね」
グ「ああ、そうなんだ。その傷はまだ右(みぎ)腹(はら)にあるよ」
レ「その傷もずっと痛むのですか?」
心配そうにレゴラスが尋(たず)ねた。グロールフィンデルは頷(うなず)いた。
グ「でも大丈夫だよ。エルロンド様は中つ国で一番強いからね。さあ、おやつを食べに行こうか」
勉強が終わり、エルロンドの部屋へやって来た。
エル「さあ、お入り。おやつを用意しているよ」
穏やかな昼に一人のエルフが駆け込んできた。
エルフ「エルロンド様!」
エル「どうした、あっ!」
そのエルフはエルフの子供を抱えていた。そのかたわらに、もう一人子供のエルフがいた。
ロヒア「ラダンが怪我(けが)をしたんです」
エルフ「右のふくらはぎを切っていて」
エル「あっちのテーブルの上にうつ伏せにさせておいて」
エルフ「はい」
エル「説明して、エルロヒア」
ロヒア「はい、大きな猪にやられたんです。3日前から一緒にいた猪だったんですが、昨晩から姿を消していて、昼に戻ってきたと思ったらいきなりエルラダンに突進してきたんです。それでエルラダンがとっさによけたんですが、牙が足をかすめたみたいで」
エル「どうして攻撃してきたか分かるか?」
ロヒア「はい。猪の体に見なれない矢じりがささっていたんです」
エル「なるほど。で、その猪は仕留めたか?」
ロヒア「はい、なんとか。でもエルラダンがあんなんだし上手に処理してあげられないから連れてきました。矢もぬいてません」
エル「そうか、誰かに言ってあるか?」
ロヒア「はい、ナーリさんとリファインさんが、ここまで運ぶのを手伝ってくれて見ててくれると」
エル「わかったよ」
不安そうに自分を見つめているエルロヒアを見かねて頭をかるくなでた。
エル「大丈夫だ」
そんな光景を見ていたエゴラスにグロールフィンデルが言った。
グ「エルロンド様の双子のご子息だよ」
エル「待たせたね、エルラダン。今から麻酔(ますい)をうつからね、麻痺(まひ)するけど心配ないから」
エルラダンは頷(うなず)くだけでしゃべれない。エルロンドは右のふくらはぎに注射をした。麻酔が効いてくるまで、針に糸を通し消毒の準備をしていた」
ラダン「麻痺(まひ)してきました」
エル「ああ。・・・これわかる?」
ラダン「いいえ、わかりません」
エル「よし」
エルロンドはまず、お湯で傷口を丁寧に洗い、アセラスのしずくでしっかりと洗った。傷口をぬい消毒液をぬりガーゼを当てて、包帯をまいた。包帯を固めて膝が曲がらないようにした。
エル「これでよしと、2~3日でよくなるからそれまでしんぼうしてよ」
ラダン「はい。・・・父上」
エル「ん?」
ラダン「ありがとうございます」
エル「どういたしまして。今日はついてないんだろう、こんな日はどこにも行かずのんびり過ごしていれば良い」
ラダン「はい」
父の優しい言葉に心から安心した。
エル「さて、猪をどうしようかな。2人とも来るんだよ。本来、仕留めた者がすべきことだけど、大きいらしいから私も一緒にやろう」
ロヒア・ラダン「はい」
レ「私も連れて行って下さい」
エルロンドはおどろいて振り返った。
エル「レゴラス、しかし」
そう言ってグロールフィンデルを見た。
グ「私には判断しかねますよ」
エル「とても気分の悪くなることをするぞ」
レ「かまいません」
エル「わっかた。ただし気持ち悪くなったら帰るんだよ」
レ「はい」

エル「こりゃ大きいな」
作品名:裂け谷にて 作家名:棚橋