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ますら・お
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novelistID. 17790
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シャルラロハート 第一幕「少女と騎士(ドール)」

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『大丈夫、落ち着いて』
直ぐに左肩に刺さった刃を慌てて抜く。よく分からないが傷は浅いようだ。身体を覆う鎧が無ければもっと深く刺さっていたのかもしれない。
直ぐに敵を探すがどこにも最後の一体がいない事に気づく。
「逃げられたか・・・・・・」
残りの一体は自分が怯んでしまった間に逃げたのだろう、周りを見渡しても動いているものは何も存在しない。
左肩を右手で押さえながらふらふらと剣の刺さっている化け物へと向かっていく。
「ふぅ・・・・・・なんとかなったな」
『一匹逃したのが痛かったね。だけど始めてでこれだけやれれば十分。後で対策を練ればなんとかなると思うわ』
「そうか・・・・・・」
化け物の遺骸から剣を抜くと発火して灰となった。
「そろそろ同化を解いてくれないか?」
『ちょっと待ってね。今損傷箇所の修復をしてるから』
刃の刺さった箇所を見ると淡い光が発生し、傷の部分が少しずつ塞がっていくのが分かる。
(便利なもんだな・・・・・・)
『終わったよ。じゃ、同化を解くね』
再び視界が真っ白になる。
そして視界が晴れたときには暁は元の身体に戻っていた。あの少女はいつの間にか暁の隣にいる。
「はぁ・・・・・・なんだよコレ」
同化が解けると同時に暁は地面にぺたんと尻をついた。
俺は化け物に襲われて、ローゼと同化して奴らを蹴散らしたそれだけのことだ。ただ、それだけのことの筈なのだが現実の事とはとても思えない。これもまたあの悪い夢の続きなのだろうか。
少女が心配そうにこちらを覗き込む。澄んだ赤い色の瞳、穢れも何も知らなさそうな純粋な色だ。全体を見渡すとこの少女はなかなか可愛いのではないのだろうかとも思う。
「やっぱりいきなりだから辛かったかな?」
「当たり前だ。一匹逃がしたが危機は乗り切った。これで終りさ」
「まだよ。アリオンはこれだけで引き下がるような連中じゃないわ」
「無理だ。俺は戦えない」
「いえ、貴方ならやれるわ」
少女はゆっくりと暁の傍に寄った。
「確かに奴らを倒したが今回はお前のフォローがあったからだ。こんな戦闘経験がない奴よりも他にも適任なのはいるだろう」
「貴方の言う通りいるかもしれない。だけど途方も無い確率の中からローゼは貴方を選んだ。私はそれを信じるわ。それに適合者を探して暢気にこれ以上長い旅を続けている暇はないわ」
話の筋から解読するとこの少女は今まで色々なところを回ってきたのだろう。そして長い旅の末についにローゼが求めるマスターであるという俺を見つけたということか。
もしかしたらこの少女と共に戦った事によって、俺は想像以上に深い闇へと足を踏み入れてしまったのかもしれない。目を背けようと思ってもこの事実を一度知ってしまったからには忘れる事もできないだろう。
厳しい立ち位置に自分はいると痛感する。
もし、この少女と共に戦う事になれば自分の命を危険に晒す事になるだろう。俺にはその覚悟も何も無いし、出来ればそんなのは御免だ。
少女は再び暁の顔を覗き込んだ。
「やはり、悩むか。本当は私だって無理強いはしない、と言いたい。だけど、奴らの脅威が間近に迫ってる以上、貴方が一番なの」
「だけど、俺は・・・・・・」
心の中で様々な感情が蠢いている。
何もかもがあまりに重すぎて潰れてしまいそうだ。いきなり化け物との戦いを強要され、挙句に自分の運命さえも変えなければならないのだから。
「仕方ないわね。また次に会うまでに貴方なりの答えを導きだしておいて。ただ事態は逼迫してるから多くの時間を貴方に与えられない」
悩み続けて答えを導き出せない暁に少女は声をかける。
「・・・・・・ああ」
暁は今出せる言葉をなんとか捻り出して返答した。
少女は頷くと、軽く髪をかきあげて立ち去ろうとする。
「ま、待ってくれ、お前の名前は?」
立ち止まる少女。少しの間を置き、首だけをこちらに向ける。
「ミラ、そう呼んで」