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小太郎の飛行機旅行

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9月23日 金曜日(祝日)


 朝、雨は上がっていた。
 誰もいないキャンプ場で遊んでからテントを設営。

「今日の予定は?」
「白神山に行きたいんやけど」
「白神山? どこにあるか分かってるん?」
 地図を見ると秋田県と青森県境にある。
「遠いわ。行ってすぐに帰って来なあかんやん。そんなしんどいんはかなんわ」
 足跡を残すのが好きな夫との間で少しもめたが、雨が再び降りだしたことで、平泉に行くことで合意。

 小太郎には手作りのレインコートを着せた。透明のゴミ袋を切り開き穴をあけてガムテープでとめ、ボール紙で作ったひさしまで付いている。あらかじめ作っていたのである。私たちは山用レインウェアを身にまとった。

 岩手県平泉中尊寺には多くのお堂があり、参道月見坂のゆるい坂を、お堂や院を眺めながら上がっていった。
 宝物館には交替で入った。犬は入れない。次から次へと観光客が団体でやって来る。その波をやり過ごすために木の下に行ったり屋根の下に行ったり。
 国宝の金色堂。まばゆいばかりの金箔? それともほんまもんの金だったろうか、像が安置してあった。パンフを保存していないのが悔やまれる。

 午後は達谷窟毘沙門堂を訪れた。大きな岸壁の窟に木でこしらえた大きな、舞台のようなお堂である。岩壁には人の顔が浮かび上がっている(表紙の写真)。その大きさに圧倒された。
 雨はすでに上がっていた。庭に咲く花を眺めながら、のんびりと散策した。

 ここはキャンプ場へ戻る道すがらで、平泉から5キロメートルほどの地点にあり、さらに戻る途中3キロメートルほどで厳美渓がある。磐井川の景勝地である。岩壁に挟まれるようにして川は流れていた。川辺まで降りて行った。速い水の流れは心を気持ち良くしてくれる。
 名物の郭公団子をほおばった。道路沿いの店からケーブルで運ばれて来るから付いた名前らしい。

 旅の楽しみのひとつは食べることである。平泉では、雨で冷えた体を温めるそばと、団子を食べた。また、ずんだ餅もおいしかった。
 そば類と餅菓子と団子は旅行先での私の定番である。

 藤沢周平作品には、餅菓子や団子を食べるシーンがよく出てくる。実にうまそうに食べる描写を読むたびに食べたくなって、食べながらその本を読むことが度々あった。いろいろな土地での味わいを知りたくなったのである。
作品名:小太郎の飛行機旅行 作家名:健忘真実