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桜田みりや
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novelistID. 13559
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空白の英雄2

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湯上がりのトオンに言われるままにバスルームに入った。
「どうしよう…」
もくもくと湯気の上がるバスルームでミーファは考えていた。もしミーファが男性なら少しは役に立てたかもしれない。トオンに剣術を習い、トオンの背中を守る。それは素敵なことだろう。ミーファはうっとりと想像した。
だが残念なことにミーファは女の子で体力もなく、剣術の才能も全くない。
「そりゃ足手まといよ…」
ミーファは鏡の露を払った。鏡はミーファの体が女の子のものであることをしっかり映していた。
風呂場で考えた。それがいけなかったのかもしれない。
風呂上がりのミーファは髪を適当に拭いて上がった。トオンはもうソファーの上で目を閉じている。
「ねぇトオン」
唸るような声で返事が帰ってきた。
「トオンも男の人?」
「何が言いたいんだ」
ミーファはソファーの上に登った。もちろんソファーの上にはトオンが寝ているからその更に上にいることになる。
「私!」
トオンの頭の両端に手を突いた。
「…私……トオンの足手まといだから、だから役に……立ちたいの。私何もできないから……だから……あのっ……一応女の子だし……」
トオンにはすぐにミーファの意図が見て取れた。ミーファは何もできない代わりに自分自身を投げ出している。トオンの上に四つん這いになっているミーファの体にはタオル1枚しかない。それももはや胸の前ではだけていていつ取れてもおかしくない。タオルからのぞくミーファの小さな胸からトオンは目をそらした。
トオンはミーファを持ち上げミーファをベッドに放り投げた。
「痛い! 何するの! トオンのバカ!」
「それはこっちのセリフだ」
トオンはベッドとは真逆に寝返りを打った。
しぶしぶミーファはタオルからパジャマに着替えた。それが終わると小さくトオンをよんだ。はじめはトオンに無視をされた。
あんまりしつこいのでトオンが振り向くとミーファはちゃんとパジャマに着替えてベッドの上に座っていた。
「ご、ごめんなさい。でもトオンに迷惑かけてばっかりで私悲しくて…また置いていかれたくなくて。だから…」
返事が帰ってこない。ミーファはただただ肩を落とすしかなかった。もちろん彼女は嫌われたか役不足と考えた。それ意外は頭の中に可能性すら存在しえない。
自分は足手まといの存在でしかないと考えるのもしかたがない。
何かが頭に落ちてきた。
「痛い! …何これ?」
ぶつかってきたのはトオンの財布だった。彼が投げてきたのだろうが、ミーファには理由はわからない。
「全財産だ」
トオンの背中はそう言った。だからどうすればいいのかはわからない。
「どうしたらいいの?」
「持っとけ」
「トオンお金なかったら困るでしょ」
「お前が管理すればいい」
ミーファはジッと手の中にある財布を見つめた。とても古くて重い…トオンの財布だった。中もぐちゃぐちゃで何が重いのかわからない。そんな中身の財布だった。
今からこの財布はミーファが持つ。明日からはミーファがいなければトオンは食べることも寝る場所を借りることもできない。この財布を持つのはそういうことだ。
「ありがとう!」
ミーファは財布を抱きしめて毛布に丸まった。




作品名:空白の英雄2 作家名:桜田みりや