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恋を教えて

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水仙の罠




――なあ、知ってるか?多少強引な方が……――



「……様、コレー様!」

 呼ばれて少女は振り返った。その手には作りかけの花冠。

「なあに?」

 にこりと、彼女こそが花のように笑う。

「見てくださいな、このきれいなお花を。今お作りの花冠に合うと思いますの」
「使ってみていただけますか?」
「もちろん! ありがとう」

 満面の笑みで受け取り、少女は渡された花を冠に編みこんでいく。
 その手に迷いはない。

「できた! どうかしら?」
「とってもお上手ですわ」
「きっと喜んでいただけます」

 惜しみない賞賛にはにかむ。
 彼女が作り上げた花冠は3つ。母と友人に渡すつもりだ。
 気高いけれど優しい人たちはきっと喜んでくれることだろう。

 そんな未来を想像して立ち上がる――と、視界に白いものが入り込んだ。

「……?」

 怪訝に思って身体ごとそちらを向くと、そこには純白の水仙の花。

「わぁ……!」

 数多の、そして色取り取りの花が咲くこの場所で。
 それでも他の色に埋もれることなく凛と咲き誇る白。その気高さに心を奪われる。
 先ほど思い浮かべた女性たちにきっと似合う。一輪しかないから全員には渡せないけれど、その美しさを味わうことはできるだろう。
 そう考え、少女は花に向かって無邪気に駆け出す。後ろで驚きの声が上がったけれど、コレーの耳には入らない。

 コレーは膝をつき、白魚のごとき指先でその花に触れた――

「――っ!?」

 突如、地面が揺れた。
 思いもよらない事態にバランスを崩し、その場に倒れるコレー。
 さらに恐ろしいことに地面が割れる。

 そして……

「あ……」

 夜の闇よりもなお深い黒髪と、深遠を思わせる黒い瞳を持った、寒気を呼び起こすほどに美しい男が姿を見せた。
 彼の印象は黒というよりも闇。

 そう、話に聞く冥府のような。

 その手が伸びた。コレーに向かって。

「……や、いや……母様――!!」



――なあ、知ってるか?多少強引なほうが女には好かれるんだぜ?――


作品名:恋を教えて 作家名:緋水月人