小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

一生懸命頑張る君に 1

INDEX|7ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

Episode.3【人生経験不足】part2



当日。
紫乃は、正直、焦っていた。
彼らが通っている、伯領中学校の陸上部は、いわば『弱小チーム』だった。
武隆と裕也は、とても足が速い。
タイムだって申し分ないくらいだった。
期待の星。
でも、紫乃は分かっていた。
あともう一人が必要だった。
彼ら・・・特に武隆には。
しかも、武隆には、特定の人物が必要だということも分かった。
それが田中琥瑦だった。
でも、琥瑦は死んだ魚の目のような、もうこの世には何もないというような眼をしていた。
武隆は、紫乃と話している時でさえ、琥瑦のほうをちらりと見ていた。
裕也にしてもそうだ。
琥瑦と武隆に何があったのかは、正直分からなかったけれど、伯領中陸上部にはなんとしても必要だった。
だから、琥瑦を誘った。
来るかどうかは、きっと、彼次第だ。

琥瑦は行かないつもりだった。
もう、自分の中に踏ん切りをつけたかった。
陸上をやったら、きっと、もっと迷惑をかける。
これが琥瑦の出した答えだった。
なのに、琥瑦は九時くらいになって、じっとしてはいられなくなった。
近くのコンビニに行こうと思った。
「いらっしゃいませ~」
飲み物を手にとって、雑誌でも立ち読みしようとしたが、集中できない。
雑誌を戻して、飲み物を店員に渡すと、お客様、お疲れですか?と聞かれた。
そんなに疲れた顔をしてるのかと思った。
「ありがとうございました~」
自分のやりたいことをやってないと疲れる。
そんなことが、雑誌に書いていたような気がした。
なんだか、帰る気にもなれず、あてもなく歩き続けた。
いや、その脚は、確実に競技場へと向かっていた。
琥瑦ははっとした。
いつの間にか、電車に乗って、競技場に行こうとしている自分が、そこにはあった。
引き返そうと思えば、引き返すこともできた。
でも、琥瑦の中には、ちょっとだけならという気持ちもあった。

そして十時ごろ、競技場に着いていた。

作品名:一生懸命頑張る君に 1 作家名:雛鳥